低コストなイチゴ高設栽培装置「ピートベンチ」の開発


[要約]
養水分緩衝能の高いピートモスと排水用不織布、ポリフィルム等を組み合わせて、低コストなイチゴの高設栽培装置を開発した。固形肥料が主体の施肥管理により、土耕栽培の感覚で、容易に高設栽培を行うことができる。
奈良県農業試験場・軽少量培地耕チーム
[連絡先] 0744-22-6201
[部会名] 野菜・花き(野菜)
[専 門] 栽培
[対 象] イチゴ
[分 類] 普及

[背景・ねらい]
 イチゴ栽培の省力化には高設栽培の導入が最も効果的であるが、設置コストが高いことや培養液管理等が煩雑なために導入をためらう生産者が多い。そこで、緩衝能の高い有機質系の培地を用い、従来の土耕栽培に近い感覚で栽培できる低コストな高設栽培装置を開発した。

[成果の内容・特徴]

  1. 低コスト・軽量性・品質の均一性・養水分に対する緩衝能の高さなどを満足する培地素材として、ピートモスを選定した。
  2. ピートモスは保水力が高く、単一培地では過湿害の恐れがあるが、底面給水用不織布を用いて排水させることによって、もみがらなどの粗孔隙資材を混合することなく、容易に培地の気相率を高めることができる(図1)。
  3. 高設栽培装置の構造は、30cm間隔で水平に固定した2本の鉄パイプの間に厚さ0.15mmのポリフィルムを緩やかに張って栽培槽とし、その上にベンチ長1mあたり約22_のピートモスを詰める。フィルム底部に50cm間隔で切れ目を入れ、不織布を下垂部分の長さが15cm以上となるように挿し込む(図2)。ピートモスはあらかじめ苦土石灰でPH6.0付近に調整しておく。かん水は、ベンチ中央に、かん水孔を下向きに敷設したかん水用チューブで行い、水は循環させずに掛け流し方式とする。
  4. 不織布は、下垂部分が長いほど培地の水分量を少なくすることができ(図3)、設置間隔が狭いほど排水速度が速くなる(図4)ので、これらを調節することによって水分制御を行う。
  5. 施肥は固形肥料、培養液いずれも可能であるが、当面は固形の肥効調節型肥料等を用いた置き肥方式を主体とする。
  6. 本装置を用いた促成イチゴ栽培では、土耕栽培と同程度の収量をあげることが可能で、設置コストは10aあたり150万円以内である(表1)。培地は3年以上使用できる。

[成果の活用面・留意点]

  1. 低コストで、かつ培養液調整装置等を必要としないので、比較的高齢の生産者や、小規模あるいは分散した施設にも導入が可能である。
  2. 栽培系外への肥料成分の流出は土耕栽培と同等か若干少ないが、過剰な施肥は避ける。

[その他]
研究課題名:果菜類の省力・高品質生産のための軽・少量培地耕システムの開発
予算区分 :新技術(国補)
研究期間 :平成11年度(平成10~12年)
研究担当者:平山喜彦、信岡 尚、東井君枝、吉田和嗣
発表論文等:ピートモス培地によるイチゴ高設栽培の実用化に関する研究、奈良農試研報、印刷中.
      イチゴ高設栽培における不織布による培地水分特性の改善、園学雑、67巻別2:316、1998.

目次へ戻る