[成果情報名]

浸種催芽・乾燥処理による高活力イネ種子の製造と利用

[要約]種子が吸水し活性化した段階で発芽を停止させた乾燥種子 (活性化種子) は活力が高いまま保存されており、低温及び低酸素下でも発芽が速い。活性化種子を利用すれば浸種催芽時間を短縮でき、乾燥していても催芽種子に匹敵する苗立ちと初期生育がえられる。
[キーワード]直播、水稲、種子、苗立ち、種子勢
[担当]近中四農研・地域基盤研究部・土壌水質研究室
[連絡先]084-923-4100
[区分]近畿中国四国農業・生産環境 (土壌・土木・気象) 、共通基盤・土壌肥料
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 湛水土壌に播種された水稲種子は酸素不足を始めさまざまなストレスに曝されている。苗立ちを安定化させるためには種子勢 (原語Seed vigor、種子活力ともいう) を高める必要があり、採種 (栽培、保管を含む) 条件の改善などが提案されているが、広く実用化されていない。種子は吸水という物理的プロセス、次に代謝の活性化という化学的プロセスを経て発芽する。そこで、活性化された段階で発芽を停止させた活力の高い乾燥種子を製造し、新たな播種技術のシーズとする。

[成果の内容・特徴]

  1. 収穫種子を塩水選後休眠打破し、さまざまな時間浸種、催芽処理し、その後乾燥させた。次に発芽率と発芽速度を測定した (図1)。その結果、品種ヒノヒカリでは浸種 (25℃、種子の2倍量の水、1日) し、催芽 (25℃、保湿状態、半日) させ、直ちに乾燥 (50℃、1~4日間、4.1~6.9%水分) させることにより、発芽率を損なうことなく、発芽速度が高まることが判明した。この様にして製造された種子を活性化種子と名づけた。
  2. 活性化種子の発芽は低温下でも速く、無酸素下でも鞘葉の伸長は優れている (表1)。また、活性化した乾燥種子を湛水土壌中15mmの深さに播種したとき、地上部重は対照の乾燥種子より大きくなる。
  3. 活性化種子は乾燥種子の湛水直播にも適する。鉄コーティングにより種子を加重し浮き苗の発生を抑制したとき、落水条件下の散播で活性化種子 (乾燥) の苗立ち率と地上部重は催芽した対照種子と同等で、対照の乾燥種子より優れている (図2)。同様に鉄コーティングし湛水条件下で散播したとき、苗立ち率に差はなく、地上部重は催芽種子に比べて低いが対照の乾燥種子より優れている。

[成果の活用面・留意点]

  1. 湛水直播において浸種催芽時間を短縮できる。
  2. 浸種と催芽を省略した乾燥種子の湛水直播は、省力性が高く作業にも融通が利く。
  3. 活性化の程度は条件によって異なるが、品種に関わらず活性化は可能である。しかし、種子が劣化していたりすると製造過程で発芽自体が損なわれる。
  4. 活性化についての生理学的機構は未解明である。トマト、ニンジン、ムギなどで研究されている発芽前の種子に吸水と乾燥を繰り返すHardening処理との関連性を解明する必要がある。

[具体的データ]

図1

図2

表1


[その他]
研究課題名土壌管理の改善に基づいた棚田における直播栽培技術の確立
予算区分交付金
研究期間2000~2002年
研究担当者山内稔
発表論文等山内 (2002) 日作紀 71 (別1号):152-153

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