[成果情報名]

イノシシの跳躍能力

[要約]餌付け・誘導により、野生イノシシの跳躍能力を測定できる。成獣は、高さ120cmの障害物を飛び越えることができる。生後半年の幼獣においても、代表的な防除技術であるトタン板の高さ(65cm)を飛び越えることができる。餌の獲得を目的としたとき、イノシシは助走しないで障害物を跳躍する。
[キーワード] イノシシ、野生動物、行動、跳躍能力、運動能力、鳥獣害、被害対策
[担当]近中四農研・地域基盤研究部・鳥獣害研究室
[連絡先]0854-82-0144
[区分]近畿中国四国農業・生産環境(鳥獣害)・畜産草地、共通基盤、畜産草地
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 近年、野生鳥獣による農作物被害が増加しており、農業が継続できない事態も見受けられる。イノシシの運動能力に対する科学的データはなく、現場では、イノシシの習性や行動に対する誤解から、効果の期待できない被害対策を施している場合が多い。防除柵を設置しても跳び越えられて、田畑へ進入されることもしばしばである。そこで本研究は防除柵の効果向上にむけて、イノシシの跳躍能力を測定した。

[成果の内容・特徴]

  1. 野生イノシシの跳躍能力を測定した。鉄製パイプ(直径5㎝)で4m四方の実験柵を作り、その中に餌をまいて、イノシシの侵入を観察した。野生個体の餌付けによる馴致に6カ月間を要した。イノシシが柵内の餌を摂食するようになったところで、柵を11㎝ずつ高くしていき(パイプ間の隙間6㎝)、イノシシの跳躍行動を記録した(図1)。
  2. 野生成獣4頭の最高跳躍記録は88 110㎝(助走なし、障害物との接触なし)であり、1頭は実験柵の最上段に接触しながらも120㎝を跳躍した。生後半年の幼獣6頭(推定体重20㎏)中4頭はトタンの高さ相当の66㎝を助走なしで飛び越えた(図2)。
  3. イノシシは獣道から実験柵に近づき、周囲を警戒、柵の高さ等を確認し、頭部を上下に動かして視線を変えて、助走することなく、跳躍した。跳躍時の足の踏み切りは、障害物に近い位置(30-40cm)で行った(図3)。
  4. 飼育イノシシを供試し、跳躍能力の限界値を測定するため、まず、実験柵への反応を調べた。柵の隙間を10㎝以下に設定すると、限界まで跳躍し、跳躍に失敗しても再度跳躍する。隙間が20cmあると、柵の高さが70㎝であっても、隙間を通り抜けることを試み、跳躍しなくなる。

[成果の活用面・留意点]

  1. 本研究の結果を被害防除の参考にする場合は、単に跳躍記録(高さ)だけにこだわるのではなく、田畑を2重に囲うなどで障害物に奥行きを持たせて、イノシシの踏み切りの位置をずらすような工夫も有効である。
  2. 隙間が20cmあると、柵の高さが70㎝であっても、成獣は跳躍しなくなるが、幼獣の柵内への進入が可能になる。

[具体的データ]

図1

図2

図3


[その他]
研究課題名各種の刺激・脅しに対するイノシシの反応、慣れの分析
予算区分鳥獣害
研究期間1999 2000年度
研究担当者江口祐輔、宮重俊一、林孝、石井忠雄
発表論文等江口ら(1999)日本動物行動学会第18回大会講演要旨集 35
江口ら(2000)第97回日本畜産学会大会講演要旨 173
Eguchi,Y et al. (2000) Proceedings of 3 rd International Wildboar Symposium 29

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