[成果情報名]

花粉ベクター法による耐病性遺伝子導入ユリの作出法

[要約]ユリ花粉に耐病性遺伝子と選抜マーカ遺伝子からなるDNAを導入処理し授粉すると多数の胚を得ることができる。得た胚を選抜培養することにより、耐病性遺伝子を持つ遺伝子組換えユリを作出できる。
[キーワード]ユリ、遺伝子導入、花粉ベクター法、パーティクルガン、キチナーゼ
[担当]愛媛県農試・作物育種室
[連絡先]089-993-2020
[区分]近畿中国四国農業・生物工学
[分類]科学・普及

[背景・ねらい]
 アグロバクテリウム法やエレクトロポレーション法など従来の遺伝子導入法では、遺伝子組換え体を得ることが困難なユリについて、遺伝子を導入処理した花粉を授粉することにより生殖過程を経由し遺伝子組換え体を作出する花粉ベクター法を確立し、これにより耐病性遺伝子を導入したユリの作出を行う。

[成果の内容・特徴]

  1. 導入遺伝子は耐病性遺伝子としてイネ由来キチナーゼ遺伝子、選抜マーカー遺伝子としてハイグロマシン耐性遺伝子を持つpUC系ベクターである(図1)。
  2. 3万から4万個のシンテッポウユリの成熟花粉を直径27mmのメンブレンフィルターに置床し、パーティクルガン(日本医化器械製作所製:PIGG-X)で導入遺伝子を花粉フィルターあたり3回導入処理する。
  3. パーティクルガンの使用条件は発射筒から花粉の距離が3.5cm、ヘリウムガス圧が平方センチメートルあたり14kgf、パーティクルガン1回発射あたりのDNAと金粒子量が各々0.8μgと0.8mg及びチャンバー内部圧力が60mmHgとする。
  4. 遺伝子導入処理花粉は12から24時間後、シンテッポウユリの柱頭に授粉する。授粉約60日後、形成した未熟胚はハイグロマイシンBを100mg/L、NAAを0.001mg/L添加したMS培地に置床、1か月ごとに継代し、選抜培養する。
  5. 遺伝子導入処理したシンテッポウユリ花粉を125花に授粉すると、7,884個の未熟胚が得られる。選抜培養により578個体が発芽及び生育し、その割合は7.8%である(表1)。
  6. 発芽及び生育したユリの葉からEdwards,Kらの方法でDNAを抽出し、PCR法により46個体でキチナーゼ遺伝子を検出できる(表1図2)。
  7. 花粉ベクター法によるキチナーゼ遺伝子の導入効率は、授粉により形成した胚あたり0.6%、ハイグロマイシンBによる選抜培養で発芽及び生育した個体あたり8.0%である(表1)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 花粉ベクター法によりシンテポウユリでの遺伝子組換えが可能になる。
  2. キチナーゼ遺伝子を導入したユリより、葉枯れ病などに対する耐病性ユリの作出が期待できる。
  3. 花粉ベクター法が適用できるユリ以外の作物は、不明である。

[具体的データ]

図1

図2

表1


[その他]
研究課題名ユリ類のin vivoにおける遺伝子導入技術の開発
予算区分先端技術(国補)
研究期間2000~2001年度
研究担当者栗坂信之、廣瀬由紀夫、淺海英記
発表論文等なし

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