[成果情報名]

効率的なダイズ形質転換体の作出法

[要約]アメリカ品種Jackの未熟子葉から高い増殖能を有する不定胚を誘導する。ハイグロマイシン抵抗性遺伝子と目的遺伝子を接続し、遺伝子銃法により不定胚へ導入する。ハイグロマイシンによる選抜により、安定的に形質転換体を作出することができる。
[キーワード]ダイズ、遺伝子銃、不定胚、ハイグロマイシン抵抗性
[担当]近中四農研・作物開発部・育種工学研究室
[連絡先]084-923-4100
[区分]近畿中国四国農業・生物工学
[分類]科学・普及

[背景・ねらい]
 ダイズはタンパク質、脂質源として重要性が高い作物である。米国では遺伝子銃法やアグロバクテリウム法により有用な形質転換体が開発され、広く作付けされている。しかし、日本国内では再現性のある形質転換系は開発されていない。そこで、これまでに報告されている培養法と遺伝子導入法の条件を精査し、実用的な形質転換系を開発する。

[成果の内容・特徴]

  1. アメリカ品種Jackの登熟中の莢から未熟子葉(5-10 mm)を取り出し、向軸側を上にしてMSD40固形培地(MS無機塩, B5ビタミン, 3% しょ糖, 40 mg/L 2,4-D , 0.2% ゲランガム, pH 7.0)に置床し、日長23:1 、光強度5-10 μmolm-1 s-2 、25℃で培養すると、3 4週間で不定胚を生じる(図1 a, b)。
  2. 不定胚はFN Lite液体培地(FN Liteマクロ塩, MSマイクロ塩, B5ビタミン,1g/Lアスパラギン, 5 mg/L 2,4-D, 1% しょ糖, pH 5.8)に移し、振とう培養することにより、漸次、胚を発生し、増殖、維持することが可能である(図1 c, d)。
  3. 増殖した不定胚を集め、MSD20固形培地(MS無機塩, B5ビタミン, 3% しょ糖, 20 mg/L of 2,4-D , 0.2% ゲランガム, pH 5.8)に置床し、表面を乾かした後、遺伝子銃(バイオラッド)によりプラスミドをコートした金粒子(1.0 μm)を1350 psi, 6cmで導入する(図1 e)。
  4. 遺伝子を導入した不定胚は抗生物質を含まないFN Lite液体培地で1週間培養した後、ハイグロマイシン15 mg/Lを添加したFN Lite液体培地で4週間、ハイグロマイシン30 mg/Lを添加したFN Lite液体培地で4週間培養する。この間、毎週、培地を交換する。
  5. ハイグロマイシン添加培地において8週間培養することにより、ほとんどの不定胚は白化する。緑色の不定胚塊をFNL0S3S3GM液体培地(FN Liteマクロ塩, MSマイクロ塩, B5ビタミン, 30 mMグルタミン , 2 mMメチオニン, 3% しょ糖, 3% ソルビトール, pH 5.8)に移し、3 4週間振とう培養することにより、胚を成熟させる(図1 f)。
  6. 成熟した胚は約1cm3 のMS固形培地片の入ったシャーレで3 5日間乾燥させた後、植物生長調整物質を含まないMS固形培地で発芽させる(図1 g, h)。発芽した個体は十分に生長させ、順化させた後に培養土を充填したポットに移植する。
  7. GFPは遺伝子銃による遺伝子導入の確認に有効であるばかりでなく、抗生物質による選抜過程の不定胚や再分化個体における形質転換体の判別に有効である(図2)。
  8. 再分化個体のうちGFPの検出された個体についてサザン分析を行ったところ、いずれの個体からもハイグロマイシン抵抗性遺伝子が検出された(図3)。これら形質転換体のほとんどは正常に開花、結実した(図1 i)。
  9. 今回、遺伝子導入を12処理(シャーレ)行い、再分化個体を122個体得た。このうち、25個体からGFPの発現を確認した。

[成果の活用面・留意点]

  1. 形質転換に用いる不定胚は増殖、維持が可能であり、形質転換効率も高いことから、本法は実用的な形質転換系である。
  2. 本法はアメリカ品種Jackに適しており、他の品種では有効性を確認する必要がある。

[具体的データ]

図1

図2

図3


[その他]
研究課題名ダイズにおける貯蔵タンパク質欠失性の機構解明と新機能育種素材の開発
予算区分交付金
研究期間1999 2001年度
研究担当者石本政男、矢野 博、Hany A. El-Shemy(外国人特別研究員)
発表論文等El-Shemyら (2001) 育種学研究 3(別2):105.

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