[成果情報名]

PDC遺伝子アンチセンス導入によるメロンの発酵果抑制

[要約] アルコール発酵関連酵素であるピルビン酸デカルボキシラーゼ(PDC)遺伝子アンチセンスをメロン'No.44'へアグロバクテリウム法により導入することで発酵果の発生を抑制することが可能である。
[キーワード] メロン、発酵果抑制、アンチセンス、アグロバクテリウム法
[担当] 島根農試・作物部・生物工学科
[連絡先] 0853-22-6650
[区分] 近畿中国四国農業・生物工学
[分類] 科学・参考

[背景・ねらい]
 島根県では従来から黄皮白肉系メロンの育種を行っており、これまでに'ゴールドスター''おくに'などの品種を育成しているが、アールス系品種と比較して発酵果が発生しやすい性質を持っている。
 そこでピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子アンチセンス鎖をメロン'おくに'の親品種'No.44'に導入することにより、発酵果発生を抑制する。

[成果の内容・特徴]

  1. PDC遺伝子は'おくに'成熟果由来のcDNAライブラリから単離した。バイナリベクターpBI121の35Sプロモーター・GUS遺伝子に換えて高発現プロモーター(El2Ω;生物研より分譲)とアンチセンス方向のPDC遺伝子部分配列を組込み、供試ベクターとした(図1)。
  2. 遺伝子導入はアグロバクテリウム法により行った。無菌播種2日目の'No.44'子葉を幅2mm程度に細断し、アグロバクテリウム菌液(アグロバクテリウム培養液をMS液体培地で2倍希釈したもの)に浸漬後、共存培地(MS基本培地、ショ糖30g/L、寒天8g/L、pH5.8、ベンジルアデニン1mg/L)に移植した。共存培養を25℃、2日間行った後、上記共存培地にカナマイシン100mg/L、クラフォランあるいはオーグペニン200mg/Lを添加したスクリーニング培地に移植し、15日毎に継代した。次に子葉から発生した不定芽は適宜切り取りベンジルアデニン濃度を0.1mg/Lとしたスクリーニング培地に移植した。
  3. 発根処理・順化後、閉鎖系温室で栽培し、成熟果に含まれるエチルアルコール、アセトアルデヒド、酢酸エチルの濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。形質転換体では非形質転換体と比較して果実内の発酵果関連物質濃度は大幅に抑えられている(図2)。
  4. 成熟果におけるPDC遺伝子の発現を評価するためノーザンハイブリダイゼーションを行った。トータルRNAは果肉・胎座からGTC法により抽出した。コントロールでは内在PDC遺伝子の発現が強く認められるが、組換え体では同遺伝子のバンドが果肉・胎座ともに薄く、導入したアンチセンスにより発現が抑制されている(図3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. ベクターと形質転換系は他のメロン品種へ応用可能である。
  2. 形質転換体では葉身・根等でも内在PDC遺伝子の発現が抑制されているが、実験的に極度の嫌気状態においた場合は非形質転換体より早く枯死し、栽培環境下では湛水等による影響を調査する必要がある。
  3. 果実で特異的に発現するプロモーターの利用が望まれる。

[具体的データ]

図1

図2

図3


[その他]
研究課題名有用遺伝子導入法によるメロンの果実品質向上と耐病性の付与
予算区分地域先端(国補)
研究期間1997~2002年度
研究担当者近重克幸、杉山万里
発表論文等なし

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