[成果情報名]

PEP-PCR法を利用したウシ体外受精由来胚の性別とバンド3の遺伝情報診断

[要約] ウシ体外受精7日目胚盤胞の1/4~1/3を切断後、サンプルを熱処理して抽出したDNAをPEP-PCR後、DNA産物を精製し、性判定及びバンド3診断に供することにより、2種類の遺伝情報を診断でき、GL-Tipガラス化法による超低温保存・移植により子牛を生産できる。
[キーワード]ウシ、体外受精胚、胚盤胞、性判定、バンド3、ガラス化
[担当]兵庫農総セ・生物工学
[連絡先]電話0790-47-2414、電子メールKeiichirou_Tominaga@pref.hyogo.jp
[区分]近畿中国四国農業・畜産草地
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 反復配列の多い雄特異的DNA領域に対してPCR法を利用することにより胚の性別判定が実用化されている。一方、遺伝性疾病は単一配列であるため,診断には性別判定より多くの不純物の少ないDNAを必要とする。ウシ赤血球膜蛋白異常症(バンド3)を診断するためには胚の1/2が必要であり、さらに性を診断すると移植できる胚は得られない。
 そこで、性と疾病の両方を診断するために,ウシ体外受精7日目胚を切断後,胚サンプルにPrimer Extension Preamplification (PEP) ? PCR法 (冨永ら、2003)の応用を検討し、実用的な利用を考えて、ゲル・ローディング・チップ(GL-Tip)ガラス化保存法(Tominaga and Hamada, 2001)を用いて超低温保存した胚を移植して、受胎能と判定の正確さをみる。

[成果の内容・特徴]

  1. バンド3をヘテロで保因する雄牛の精液と食肉センターで採取した卵巣由来卵子(フリー)とを体外受精し,高品質の7日目胚盤胞を試験に供する。
  2. 切断刃で胚の1/4~1/3 (10~20個)を切断したサンプルを洗浄後、10μl水に入れたサンプルを95℃5分間熱処理してDNAを抽出し、15merランダムプライマー(OPERON)を用いたPEP-PCR法によりDNAを増幅し、SUPRECTM-PCRキット(TaKaRa)でPCR産物を精製する。
  3. 性別をXYセレクター(伊藤ハム)で判定し、並行して、バンド3を遺伝子型検査法(Inaba et al. 1996)で診断する。バンド3診断では、染色体のバンド3-DNAのナンセンス変異部に対応したプライマーを用いてPCRで増幅後、制限酵素DRAIIIでDNAを切断し、切断の有無でバンド3保因を調べる(図1)。
  4. 2種類の遺伝子判定は94.8%(73/77)の胚で可能であり、バンド3保因:フリーは36:37と1:1であり、♂:♀は46:27と雄が多くなる傾向がある(P=0.08)()。
  5. 胚の受胎能と判定の正確さをみるために,経腟採卵で採取したバンド3フリー卵子を成熟培養後、ヘテロ種雄牛精子と体外受精し、雄でバンド3フリーと判定した1個の7日目胚盤胞をGel GL-Tip法でガラス化し、18日間液体窒素で保存後移植した結果、判定どおりの雄でバンド3フリーの子牛(体重22.6Kg,妊娠期間283日)を生産した(図2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 複数の遺伝情報を付加した優良牛の胚を有効利用できる。
  2. PEP-PCRや遺伝子診断技術は高度な複合技術であるため、個々の技術を完全に習得する必要がある。
[具体的データ]






[その他]
研究課題名 生殖細胞のDNA診断技術の開発による優良牛の早期選抜
予算区分 県単
研究期間 2000~2005年度
研究担当者 冨永敬一郎、岩木史之
発表論文等 Tominaga and Hamada. Theriogenology 61(6) 1181-1191 (2004)

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