[成果情報名]

直接吸着RT-PCRによるトマト黄化えそウイルス(TSWV)の検出

[要約] ウイルス粒子をPCRチューブに直接吸着させる直接吸着RT-PCR によって、各種植物からトマト黄化えそウイルスを迅速かつ省力的に検出できる。
[キーワード] TSWV、直接吸着RT-PCR
[担当] 高知農技セ・生産環境部・病理科
[連絡先] 088-863-4915、shigeharu_takeuchi@ken3.pref.kochi.jp
[区分] 近畿中国四国農業・生産環境
[分類]科学・普及

[背景・ねらい]
 RT-PCRはトマト黄化えそウイルス(TSWV)の高感度特異検出技術として診断等に利用されている。しかし、植物の組織からフェノール抽出した核酸を鋳型とすると、宿主によってはDNAの増幅が阻害され、正確な診断ができないことがある。このようなDNAの増幅阻害は、イムノキャプチャーRT-PCRの適用によって解消されるが、イムノキャプチャーRT-PCRではウイルスに対する特異抗体が必要であるうえ、抗体の吸着とその後の洗浄に時間と労力を要する。そこで、ウイルス粒子を直接PCRチューブの内壁に吸着させる直接吸着RT-PCRの適用を図り、実用的な検出感度を維持したまま検出の作業性を向上させる。
[ 成果の内容・特徴 ]
  1. 直接吸着RT-PCRの手順
    (1)  試料を10倍量(w:v)の0.05M炭酸緩衝液(pH9.6)中で磨砕してPCR用チューブ(試験ではMolecular Bio Products 製Pure Pak™またはビーエム機器株式会社製8連PCRチューブを使用)に20μlずつ分注し、4℃で一夜静置する。磨砕緩衝液としてPBSTを用いると、検出感度が低下する(図1)。
    (2)  試料液を捨て、チューブをPBSTで1回洗浄する。無洗浄ではDNA断片が増幅されず、2回以上洗浄すると、検出感度が低下する(図1)。
    (3)  逆転写酵素以外のすべての成分を含んだ逆転写反応液をチューブに分注し、80℃で5分間熱処理を行う。処理後直ちに氷中に移し、逆転写酵素を加えて図2の条件で逆転写反応とPCRを行う。なお、逆転写反応液の量は逆転写酵素を加えて20μlとなるようにする。
  2. 本法ではトマトをはじめ、フェノール抽出した核酸を鋳型とした場合に検出が不可能なピーマンを含む、少なくとも14種植物の感染葉から特異的にTSWVを検出できる(図3)。
  3. 本法の検出感度は、トマトとナスではイムノキャプチャーRT-PCRにやや劣るが、ピーマンでは逆に高い(図4)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本法はウイルス特異抗体を必要とせず抗体の吸着処理が不要であるうえ、短時間の熱処理によって核酸を抽出するため、従来の手法よりも迅速かつ省力的にTSWVの検出、診断が可能となる。とくに、TSWVの被害が甚大でありながら従来のRT-PCRではウイルスを検出しにくいピーマンでの病害診断に有効である。

[具体的データ]


[その他]
研究課題名 PCR法を活用した植物病原体の検出及び識別の効率化
予算区分 県単
研究期間 1999~2003年度
研究担当者 矢野和孝、竹内繁治、森田泰彰
発表論文等 森田ら(2004) 四国植防 39:34-37.

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