[成果情報名]

後期重点の摘果と開花後の弱せん定は早生ウンシュウの高品質果実連年安定生産を実現

[要約] 早生ウンシュウで摘果を遅らせ、樹体に強い着果負担をかけておき、9月に葉果比20~30に仕上げ摘果し、樹冠の外周部近くに下垂するようにならせると着色が早くなり、果皮色が濃く、浮皮が少なく、糖度の高いMS級中心の果実が生産できる。せん定を開花終了後にごく軽く行うことにより、花と新梢のバランスがとれ、結実が安定し、連年生産が可能となる。
[キーワード] 早生ウンシュウ、後期重点摘果、着果負担、糖度、浮皮、弱せん定、連年生産
[担当] 愛媛県立果樹試験場・栽培育種室
[連絡先] 089-977-2100、inoue-hisao@pref.ehime.jp
[区分] 近畿中国四国農業・果樹
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 ウンシュウミカンは市場価格が安定せず、農家の経営は苦しい。価格低下の原因は流通を含めた構造上の問題もあるが、糖度不足、浮皮などの品質不良も大きな要因となっている。そこで高品質な果実を毎年生産する技術の確立を目指し、早生ウンシュウにおいて強い着果負担を利用する後期重点の摘果技術を開発した。さらに開花後の弱せん定や夏季の水管理、施肥などを組合せ、技術の総合的な体系化を行う。
[ 成果の内容・特徴 ]
  1. 後期重点の摘果とは、果皮が滑らかになるまで摘果を控え、非常に強い着果負担を樹体にかけたのちその着果負担を一気に解除する方法である。着果量が並みかやや多い程度であれば粗摘果はせず、9月に果梗の大きいもの、上向き、果皮の粗いもの、極大果など糖度の上がりにくいものを仕上げ摘果で落とす。同時に、内なりやすそなりの小玉を徹底して落とし、樹冠の外周部近くに下垂するように着果させる。
  2. 着果量が非常に多い場合(生理落果後の葉果比が8以下)には、8月中・下旬に全摘果数の20%程度を粗摘果で落とし、残りを9月中・下旬に仕上げ摘果で落とす。せん定は開花後にごく軽く行う。そうすることで新梢が短く揃い、花と新梢のバランスがとれ、結実が安定し、連年生産型の樹相となる。
  3. 着果負担をかけた樹では水ストレスがかかりやすくなる。強過ぎる水ストレスを避けるため早めに灌水する。旧葉の黄化程度を注意深く観察し、数枚の旧葉が黄化を始めたら灌水を始める。その後も乾燥が続くようなら着果量、土壌条件などによっても異なるが、少量・多回数で多過ぎない程度に灌水する。年間チッソ施用量の約3分の1を夏肥として5月下旬~6月上旬に施用する(図1)。
  4. 収穫時の糖度は、後期重点の摘果でいずれの年においても高くなる(図2)。また1樹全体でみた場合、果実に集積する糖の総量は後期重点の摘果で多くなる(図3)。ただし、葉果比が15まで小さくなると個々の果実の糖度は上がりにくい。後期重点摘果は慣行に比べ着色が早く進み、果皮色が濃く、浮皮の発生が少なくなる。
  5. 累計収量は、同じ葉果比30では後期重点摘果で約4%少なくなるが、葉果比25では約3%、葉果比20では約10%、葉果比15では約25%増加する(図4)。品質を重視する場合は葉果比25~30、収量を重視する場合は葉果比20くらいの着果程度が高品質果実連年生産の目安となる。
[成果の活用面・留意点]
  1. 密植園では効果が出にくいので、独立樹とする。着果量、樹勢などによって摘果時期を多少前後させる。摘果後に夏秋梢が発生すると着色が遅れ、糖度が上がりにくくなる。また、摘果が不十分だと糖度は上がりにくく、翌年の着花も少なくなる。
  2. この方法を数年間続けると葉密度が増加する。サビダニ等の防除はとくに丁寧に行う。

[具体的データ]


[その他]
研究課題名 地域農業確立総合研究「カンキツ経営安定のための連年果実生産システムの確立」
後期摘果・下垂着果等による高品位果実の安定生産技術の開発
課題ID 06-01-07-*-25
予算区分 地域農業確立総合研究「カンキツ連年生産」委託金
研究期間 2003~2007年度
研究担当者 井上久雄、藤原文孝、西山富久、藤井栄一、三堂博昭
発表論文等 井上ら(2003)園学雑 72(別1) 185

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