[成果情報名]

アスパラガス不定胚の同調化とシームレスカプセル化技術

[要約]同調化したアスパラガスの不定胚を同心三層構造のシームレスカプセルに封入する技術を開発した。作出したカプセルは、保存性・輸送性を兼ね備えた人工種子として利用できる。
[キーワード]アスパラガス、不定胚、同調化、同心三層構造、シームレスカプセル、人工種子
[担当]大阪食とみどり技セ・食品・資源部・生物資源グループ
[連絡先]電話番号 0729-58-6551、電子メール iwamoto@afr.pref.osaka.jp
[区分]近畿中国四国農業・生物工学
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 アスパラガスの全雄栽培は、収量・品質面のメリットが大きい。また、雄株は結実しないため、実生株の雑草化を未然に防ぎ、除草に係る労力を大幅に軽減できる。そこで、アスパラガス雄株の不定胚を誘導し、同調化した不定胚をシームレスカプセルに封入した新たな人工種子を開発する。
[成果の内容・特徴]
「不定胚の同調化」
  1. 2,4-D 2 mg/l、ジベレリン1 mg/l、ショ糖3%を添加したMS寒天培地で雄株の茎頂組織を8週間培養する。その後、ジベレリンのみを除いた同組成の培地で8週間ごとに継代培養を続けると、培養開始32週間後にはEC誘導率が55.3%まで向上する。
  2. EC懸濁細胞をホルモンフリーのMS培地で100μl/lの濃度に調整して不定胚を誘導する。図1の手順に従い、細胞集塊のサイズ選抜、培地交換、不定胚の希釈処理を行うと、6週間後には、1,000~2,000μmのサイズの不定胚が54.7%を占め、篩い分けにより同調化された不定胚を効率的に回収できる(図2a)。
  3. MS固体培地(ジェランガム1%)に敷いたろ紙上で、5日間脱水処理した4~6 mmの不定胚(図2b)は良好に発芽し、96%が植物体(図2e)になる。
「カプセル化」
  1. カプセルは3層構造(図3)とし、内層は培地と不定胚、中間層は硬化油脂皮膜、外層はゼラチン皮膜にすると、保存性・輸送性に優れたカプセルを作製できる(図2c)。
  2. 送液には、モーノポンプが適し、不定胚に損傷を与えることなく送液できる(図4)。
  3. 脱水処理後の不定胚を0.4~0.7%のローカストビーンガムを含む培地に懸濁することにより、カプセルへの不定胚封入率は99.8%に向上する。
「カプセル種子の特性」
  1. 表面殺菌したカプセルをMS寒天培地に播種すると発芽する(図2d)。カプセル作製直後の不定胚の発芽率は94.2%、4℃、3週間保存後は87.6%、8週間後は79.8%であり、貯蔵期間中のカプセルの変形は認められない。
  2. 特性審査基準に基づく16項目について生育特性を調査したところ、茎数は増加し、茎の太さはやや細くなるといった培養株の特性を示すが、残り14項目と染色体数、DNA分析の結果は、「ウェルカム」雄株(親株)と同等の特性を示す。
[成果の活用面・留意点]
  1. 原々種、有用遺伝資源、組換え体などの国際間輸送のデリバリーとして利用できる。
  2. 微少な種子の取扱を容易にするコート種子への応用が期待できる。
  3. 低温保存と無菌条件下での播種が必要である。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名シームレスカプセル化技術を利用したバイオカプセル種子の開発
予算区分受託(民間結集型アグリビジネス創出技術開発事業)
研究期間2002-2004年度
研究担当者岩本 嗣、金谷 忠(森下仁丹)、中辻雅章(森下仁丹)、浅田雅宣(森下仁丹)、尾島由紘(大阪大学)、紀ノ岡正博(大阪大学)、田谷正仁(大阪大学)
発表論文等1)尾島由紘ら(2004)日本生物工学会平成16年度大会講演要旨集245.
2)金谷 忠ら(2004)日本生物工学会平成16年度大会講演要旨集245.
3)岩本 嗣ら(2005)育種学研究7(別1・2)456.
4)金谷 忠ら(2005)育種学研究7(別1・2)457.

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