[成果情報名]

水稲鉄コーティング直播栽培において高い苗立率が得られる水管理法

[要約] 水稲鉄コーティング直播栽培において、湛水播種後発芽始期に落水状態とすることで、吸水不足と鞘葉の萎凋が回避され、苗立率が向上する。 再入水時期は除草剤散布時期を考慮し、イネ1葉期とする。
[キーワード] 水稲、直播、鉄コーティング、発芽、出芽、苗立ち、水管理
[担当] 広島総技研・農技セ・栽培技術研究部
[連絡先] 電話082-429-3066
[区分] 近畿中国四国農業・作物生産
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]
 水稲鉄コーティング直播栽培は種子に鉄粉を粉衣し、土壌表面に播種を行う省力的湛水直播技術である。鳥害の回避、種子を農閑期に 作り置きできるなどのメリットがあるが、一部圃場で水管理に起因すると考えられる苗立ち不良が発生する。そこで、水管理が鉄コーティング種子の 苗立ちに与える影響を明らかにし、70%以上の苗立率が得られる水管理法を確立する。
[成果の内容・特徴]
  1. 湛水播種当日に落水状態にすると、発芽始期に落水した場合に比べて発芽率が低下する(表1)。 発芽しなかった種子は、湛水中に移すと80%程度が発芽することから、発芽率低下の原因は種子の吸水不足と考えられる。
  2. 鞘葉伸長期に落水状態にすると、発芽始期に落水した場合に比べて鞘葉の萎凋発生率および枯死率が高まる(図1)。
  3. 常時湛水管理すると、発芽始期に落水した場合に比べて苗立率は低下する(表1)。750kg/10a相当の稲わらを 投入した還元状態の土壌では、常時湛水管理によって苗立率は30%程度とさらに低下するが、発芽始期落水処理によって 70%程度に向上する(図表省略)。
  4. 落水後の再入水時期は苗立率に影響を及ぼさない。不完全葉抽出前に再入水すると浮き苗が発生する。再入水時期が遅いほど 葉齢および地上部乾物重は高まる(表1)。 再入水時期は、水稲の生育と除草剤散布時期を勘案すると第2葉抽出期(イネ1葉期に相当)が望ましい。
  5. 圃場条件においても発芽始期落水処理によって70~90%の苗立率が得られる(図2)。 播種直後の落水による種子の吸水不足は降雨時には発生しないが、無降雨が続いた場合は発芽遅延を招き、 イネ1葉期到達日が1週間程度遅れる(図表省略)。
  6. 鉄コーティング直播栽培の苗立率向上に適した水管理法を図3に示す。
[成果の活用面・留意点]
  1. 浸種積算水温が20~25℃程度の場合における発芽始期の目安は、播種後の日平均水温が20℃を上回る場合は播種後2日、 20℃を下回る場合は播種後3日、18℃を下回る場合は播種後4日である。
  2. 発芽始期に落水状態とし、鞘葉が萎凋しなくても、その後晴天が続くと鞘葉の伸長が停滞し、枯死する場合がある。 鞘葉が伸長停滞する場合は、1日程度追加湛水する。
  3. 発芽始期落水処理によって、種子の土中埋没や水生生物の撹乱・食害による苗立率低下も低減できる。
  4. 圃場の落水不良部分では苗立ち不良が発生しやすいため、排水対策(圃場の均平化、播種後の溝切りなど)を行う。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 鉄コーティング種子を核とする環境調和型水稲直播技術の確立
予算区分 実用技術
研究期間 2007~2009年度
研究担当者 山本真之、貝淵由紀子

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