[成果情報名]

簡易な試験装置を用いたチャコウラナメクジの土壌環境に対する選好性の評価

[要約] 忌避テープを内壁に貼った円形水槽に、特性の異なる土壌を5mm厚の仕切り棒で区切って充填する装置を 用いると、ナメクジの土壌選好性を効果的に評価できる。この手法による評価では、チャコウラナメクジは 塩類や銅イオン濃度が高い土壌を忌避する傾向が判明する。
[キーワード] ナメクジ、防除、土壌環境、銅イオン、忌避剤、塩類、選好性
[担当] 大阪農総研・食の安全研究部・防除土壌グループ
[連絡先] 電話072-958-6551、FAX072-956-9691
[区分] 近畿中国四国農業・生産環境(土壌)
[分類] 研究・参考

[背景・ねらい]
 難防除害虫の一つであるナメクジは、湿度が高いときを除き土中に潜むことが知られている。 したがって、土壌特性がナメクジの生息の多少におよぼす影響を明らかにすることは、効率的な防除を行う上で 有用である。そこで、土壌環境とナメクジの生息状況との関連を探るための調査法を確立するとともに、 特性の異なる土壌に対するナメクジの選好性を評価する。
[成果の内容・特徴]
  1. 考案した試験装置は、円筒形の容器(直径約30cm、高さ約15cm)の底に厚さ5mmの角棒で間仕切りを設け (仕切り数は4または6区画)、容器の内壁で仕切りの上端から3cm上の部分に、忌避剤である ビスヒドロエチルドデシルアミン6%塗布フィルムを貼り付けた構造を持つ (図1)。
  2. 試験は、供試土壌を間仕切りと同じ厚みまで充填し、1区あたりナメクジ2~3個体(成体、全長3~4cm) を放飼して行う(室温20-22℃、暗所、土壌水分は最大容水量の70%)。容器が円形で、土壌と 間仕切りの厚みがほぼ等しいため、特定の場所へのナメクジの集中を回避でき、5mmという土壌の厚みに より、土に潜ったナメクジも観察できる。また、忌避剤の効果で逃走を避けることができる (図1)。
  3. この装置を用いた調査から、西日本に多いチャコウラナメクジ(Limax marginatus Muller)は、 電気伝導度が高い(0.6mS/cm以上)土壌を忌避する(図2)。
  4. pH(3.4-8.6)に対しては、有意ではないものの高いpHを好む傾向が見られる(図3左)。
  5. 銅イオン濃度が高い土壌(DTPA抽出1.5mg/kg以上)には、忌避反応を示す(図3右)。
[成果の活用面・留意点]
  1. この手法により、土壌環境(特に理化学性)と土壌動物の生息との関係を容易に究明できる。
  2. 一般の農耕地土壌における濃度帯(数mg/kg程度)でも銅イオンの忌避効果が得られることから、局所的な 銅剤の施用でナメクジを防除できる可能性がある。銅剤のナメクジへの登録は既登録剤の状況からみて 容易と考えられ、有機農業(JAS)でも利用できることから、幅広い農法への適用が期待できる。
  3. ECの試験で死亡個体が多いのは、試験時間が長くえさもない状態であったため衰弱死したものと思われる。 PHと銅イオンの試験では死亡個体はほとんどなく、試験時間は2時間程度が適当と思われる。
  4. ナメクジの防除を考える上での材料が増えるが、現場での防除法を検討する上では、別の要因 (水分環境、粗大有機物量など)を含めて考慮する必要がある。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 「土壌作物体のモニタリング調査と生理障害対策」および「土壌管理・モニタリング調査事業」
予算区分 府単
研究期間 2007~2008年度
研究担当者 佐野修司、田中 寛、柴尾 学、内山知二
発表論文等 1)佐野ら(2008) 大阪環農水研報 1: 44-45
2)佐野ら(2009) 近畿中国四国農研 15: 13-15

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