[成果情報名]

水稲非作付期における土壌管理法の改善による流出負荷低減効果の定量的評価

[要約] 水稲非作付期における土壌管理法として、水稲収穫後の耕起時期を遅らせること、暗渠管の閉鎖、 止水板の設置を組み合わせた冬期湿潤管理の面的な取り組みにより、栄養塩類等の安定した流出負荷低減効果が 得られる。また、慣行と同等の収量および品質を確保できる。
[キーワード] 水稲非作付期、土壌管理法、冬期湿潤管理、栄養塩類、流出負荷量
[担当] 滋賀農技セ・環境研究部、環境保全担当
[連絡先] 電話0748-46-2500
[区分] 近畿中国四国農業・生産環境(土壌)
[分類] 技術及び行政・参考

[背景・ねらい]
 水稲作付期における栄養塩類等の流出負荷低減技術の確立が進む中、水稲非作付期の流出負荷の割合が 相対的に高まっている。そこで、今後、年間の流出負荷量を低減するため、水稲非作付期の土壌管理法として 冬期湿潤管理を現地で導入し、栄養塩類等の流出負荷低減効果を定量的に評価する。
[成果の内容・特徴]
  1. 実証区は冬期湿潤管理として、暗渠排水管を閉鎖し、地表排水口に止水板を設置するとともに、 水稲収穫後の耕起時期を対照区(慣行管理)より遅らせた。なお、精密調査ほ場においては2007年度は 耕起時期を遅らせる効果(対照区より18日間および41日間)、2008年度は暗渠管閉鎖の効果を 検討した(表1)。
  2. 精密調査ほ場の水収支は、実証区では止水板の設置や暗渠管の閉鎖によって、地表排水と暗渠排水は 認められず、その一方で浸透水量と蒸発散量は対照区より多くなる。水田群においては冬期湿潤管理により 排水路への流出水量は対照区と比較して少なくなる。なお、冬期のほ場の状態については実証区では 水尻のごく一部分に湛水状態がみられる(表2)。
  3. 精密調査ほ場における全窒素(T-N)と硝酸態窒素(NO3-N)の流出負荷量は、冬期湿潤管理に 伴う硝酸化成の抑制によって低減し(本調査ではT-N 23~35%、NO3-N 28~45%の低減)、全りん (T-P)の流出負荷量は地表排水や暗渠排水に伴う懸濁物質(SS:濁水等)の流出防止によって 低減する(本調査ではT-P 9~36%、SS 18~100%の低減)。流出負荷低減効果は耕起時期を遅らせること よりも暗渠管の閉鎖の方が高くなる傾向にある。また、差引排出負荷量(流出-流入)は両区ともプラスの 汚濁型を示すが、冬期湿潤管理の取り組みにより対照区より少なくなる (表2、一部データ略)。
  4. 水田群においても冬期湿潤管理により精密調査ほ場と同様に安定した流出負荷低減効果(本調査ではT-N 27~34%、NO3-N 42~46%、T-P 36~44%、SS 19~28%の低減)が得られ、 差引排出負荷量も低減する(表2、一部データ略)。
  5. 水稲(品種:秋の詩)の精玄米収量および品質は水稲非作付期の土壌管理法にかかわらず同水準を確保 できる。また、冬期湿潤管理による地耐力の低下は認められず、水稲作付期の地力窒素の発現量は 同水準である(表3図1、一部データ略)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本成果は、冬期降水量が比較的少ない地域における平坦地の半湿田での結果であり、今後異なる気象条件や 土壌条件での検証が必要である。調査した両区(精密調査ほ場)のT-Nの流出負荷量は、滋賀県で過去に 実施した調査事例(22事例)と比較した場合、調査1年目の降水量が少ないため、やや低いレベルにある。
  2. 農水省研究高度化事業(課題番号1727、2005~2007年)において開発した水稲作付期の窒素流出負荷算定 モデルに今回のデータを活用することにより、年間を通した窒素の流出負荷低減効果の予測評価が 可能となり、琵琶湖の水質保全対策や政策シナリオ解析に活用できる。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 環境こだわり農業技術高度化事業
予算区分 県単
研究期間 2007~2009年度
研究担当者 蓮川博之、大林博幸、饗庭直樹、山田善彦、柴原藤善、岡本將宏

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