[成果情報名]

電気牧柵を利用した新植林地放牧によるシカ害防止と経済効果

[要約] シカが頻繁に出没する新植林地に電気牧柵を設けて牛を放牧することにより、シカの食害回避、ならびに 雑草防除や放牧牛飼養管理にかかるコストの低減が図られ、中山間における林業・畜産業複合経営に有効である。
[キーワード] 新植林地放牧、電気牧柵、シカ
[担当] 高知畜試・中小家畜課
[連絡先] 電話0889-22-0044、メールアドレス katsurou_yokoyama@ken4.pref.kochi.lg.jp
[区分] 近畿中国四国農業・生産環境(鳥獣害)
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]
 高知県内の山林では、近年シカ害が多発し新植林等の適切な育林管理が困難となっている。シカが頻繁に 出没する新植林地に電気牧柵を設けて牛を放牧することにより、シカによる樹木剥皮など食害の回避、ならびに 雑草防除及び放牧牛飼養にかかるコスト低減の可能性を検証し、林業・畜産業双方の経済効果について検証を 行う。
[成果の内容・特徴]
  1. 経済樹齢の林地を皆伐した跡にヒノキ及びスギを植林して造成された樹齢1年から15年生の新植林地 (以下、新植林地)のうち、標高1,000m前後、平均傾斜19°程度の、主に東斜面の林地を対象とする (表1)。
  2. シカによる食害が約40%程度発生する新植林地に電気牧柵を設置することで、食害は1.5%~5%まで 減少し、これに加えて牛を放牧することで更に食害の減少を期待できる。
  3. 新植林地では、牛の放牧による除草が進むことで苗木を被陰する植物が減少し、林業における下刈り 作業コスト(8~10人役/ha・1回)が削減できる。除草効果は尾根部や林道などの平坦部ほど顕著となり、 特に林道では作業のための車両走行が常時可能になる(写真1)(図1)。
  4. 電気牧柵、餌箱など必要最小限の資材設置で、牛1頭1日当たりの飼養管理コストを341円に抑えることが でき、舎飼いの1/4程度の経費で飼養管理できる(表2)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 電気牧柵は、牧線を上100cm、下50cmの2段張りとし常時4kv以上の電圧を確保する。柵を更に 高くする、あるいは3段張り以上にした場合の効果については、今後検証が必要である。
  2. 新植林地を放牧利用する条件として、湧水等を飲水とするなど1日1頭当たり40L程度確保する。
  3. 週1回程度の頻度で牧線点検や施設管理を行い、その際、人と牛との信頼関係維持や健康状態把握の ため牛を集め、1頭当たり1kg程度の濃厚飼料を給与する。
  4. 飼養管理省力化のためには周年放牧が効果的である。ただし、週1回以上の頻度で補助飼料を給与する。 特に厳寒期には、牛を舎飼いで飼養した場合に必要な養分要求量以上を給与して体重を維持することが 必要である。
  5. 放牧馴致された繁殖牛を1.3頭/ha程度の密度で初夏~秋期に放牧すると、ススキ優占の新植林地で 130日程度、低灌木類優占で120日程度、ササ類優占では70日程度の放牧が可能である。盛夏期以降、草質が 低下する時期に過放牧状態になると、牛による植林木の採食、踏み倒しが起こるので、充分に観察し 必要なら早期に退牧させる。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 簡易放牧による獣害防止と粗放的農林地管理技術の確立
予算区分 県単
研究期間 2007~2009年度
研究担当者 横山克郎、山崎清人、末信浩二

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