[成果情報名]

水稲育苗箱と底面給水用マットを用いた軟弱野菜生産システム

[要約] 開発した軟弱野菜の周年栽培システムは、水稲育苗箱や底面給水用マット等市販の部材を用いるため、 安価で組み立てが容易であり、作目と栽培時期に応じて、肥料の溶出期間と施用量を変更することで、 1セルトレイあたり600g以上の収量を確保できる。
[キーワード] コマツナ、ミズナ、葉ネギ、周年栽培、底面給水システム、毛管現象
[担当] 愛媛農水研・栽培開発室
[連絡先] 電話089-993-2020
[区分] 近畿中国四国農業・野菜
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]
 近年、大規模な直売所の展開が進んでいるが、厳寒期や夏季は軟弱野菜の出荷が少なく、地元産の品揃えが 困難な状況にある。そこで、周年を通じて数種類の軟弱野菜(コマツナ、ミズナ、葉ネギ)の生産が可能で、 女性や高齢者、更に新規就農者でも導入可能な安価で軽労化が期待できる高設架台を用いた生産システムを 開発する。
[成果の内容・特徴]
  1. 開発したシステムは、水稲育苗箱を貯水槽とし、2本の灌水チューブで給水し、貯水槽の短辺から一部を 垂らした底面給水用マットの毛管現象を利用して、貯水槽の水を排出する構造である。肥料を混合済みの 培養土を72穴セルトレイ(1穴容量58ml)に充填後、1穴あたり1粒播種し、貯水槽に置床して収穫まで 栽培する(図1)。
  2. 培養土はミックスソイル特号(伊予木材株式会社:ココピート、バーミキュライト主体)を用い、肥料は 細粒で培養土に均一に混合でき、40、70、100日の肥効調節が可能なマイクロロングトータル201 (N:P2O5:K2O=12:10:11)を使用する。100m2あたりの資材費は、水稲育苗箱を購入した場合でも 約25万円であるが、パイプハウス、暖房機、予冷庫等を必要とする(表1)。 なお、開発したシステムを自家施工する場合は、100m2当たり2人で8時間程度を要する。
  3. 夏季の出芽を安定させるため、7,8月は晴天日のハウス内照度を30kLx、9月は50kLxを目標に寒冷紗で 遮光する。また、冬季は生育を促進するため、最低気温10℃を確保する(データ略)。
  4. 上記肥料を使用した場合、収量が最大となる施肥量は栽培時期と作目で異なり、7月中旬播種のコマツナでは 培養土1リットルあたり10g、ミズナとネギでは5g、11月中旬以降播種のコマツナでは15g、ミズナと ネギでは10g施用することで、1セルトレイあたり600g(132kg/100m2)以上の収量が確保できる (図3)。なお、夏季は栽培期間よりも肥料溶出期間が長いタイプを、厳寒期は短いタイプの肥料を 選択することで、初期生育が促進され、後半の肥切れもなく、生育が安定する。
  5. 灌水管理は作目、栽培時期、生育ステージで異なり、冬季で1日あたり1~2回、夏季で2~4回、 1回の給水時間は水圧0.025MPaで20分(水深約15mm)とする。
[成果の活用面・留意点]
  1. 底面給水用マットを垂らす長さは約15cmとし、給水終了後約1時間で排水を完了できるが、同マットに 藻類が発生すると排水が著しく悪くなることから、太陽光が直接当らないように、マットの 下垂部分をマルチ等で覆う。
  2. コマツナは、カッピングとチップバーンを軽減するため苦土石灰を培養土1リットルあたり2g添加する。
  3. 肥料は培養土と混合すると同時に溶出が始まるため、夏季は播種直前に混合する。
  4. 詳細なシステムの組立て方法や栽培管理については、愛媛県農林水産研究所のホームページにマニュアルを 公開している。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 安価で省力的な軟弱野菜周年栽培システムの開発
予算区分 県単、競争的資金(JSTシーズ発掘試験)
研究期間 2007~2008年度
研究担当者 安西昭裕、石々川英樹、河内博文、河野 靖、弓達 隆

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