蒸散がカンキツの生理障害に及ぼす影響とその防止策

[要約]
果皮からの水分の蒸散が少なく浮皮の発生しやすいウンシュウミカンでは、クレフノンなどの高圧散布や 果面の拭き処理によって蒸散を促進させるとその発生が軽減され、糖度が高まる。蒸散が盛んで樹上で果皮障害が発生しやすい宮内伊予柑では、着色の良い外成り果から分割採収することで被害が軽減される。
愛媛県立果樹試験場・栽培育種室・柑橘栽培班
[連絡先]0899-77-2100
[部会名]果樹
[専門]栽培
[対象]果樹類
[分類]研究

[背景・ねらい]

年によって異なるがウンシュウミカンでは浮皮の発生が、宮内伊予柑では樹上での果皮障害の発生が問題となっている。これらの生理障害発生には品種固有の果皮形態や蒸散特性が関与していると考えられる。そこで、実用的な蒸散調節法によってこれらの防止策を検討する。

[成果の内容・特徴]
  1. 成熟期の果皮からの蒸散量には品種間差がみられ、果皮の滑らかなウンシュウミカン、ネーブル、ハッサクなどで小さく、果皮の荒いポンカン、不知火、宮内伊予柑などで大きい。蒸散の少ない前者のうちウンシュウミカンでは、成熟期の温暖な降雨とその後の低温によって浮皮が発生し、ネーブル、ハッサクなどでは貯蔵中にヤケやコハン症などの果皮障害が 発生する。                                                                                                                   一方、蒸散の多い後者のうち宮内イヨカンでは成熟期の温暖な降雨とその後の寒風によって果皮が委凋症状を呈する。成熟期の果皮表面を走査型電子顕微鏡で観察すると、蒸散の少ない品種では果皮表面が滑らかで薄いワックスに覆われているのに対して(図1)、蒸散の多い品種ではワックスがはとんどみられなかったり、宮内伊予柑では板状ワックスが部分的に剥がれている(図2)。板状ワックスの量、剥がれやすさ及び気象によって変化する気孔の開閉が蒸散を介して果皮障害に影響していることが推測される。
  2. ウンシュウミカンの浮皮に対しては、成熟期にクレフノンやカーポランダムなどを高圧で吹き付けると蒸散が促進され、その発生が軽減される(表1)。これらの浸せき処理では浮皮防止効果は認められないことから、高圧吹き付けによって果皮表面のワックスを物理的に飛ばしていると堆察される。また、夏から秋期にかけて果面の拭き処理を行うと板状ワックスがなくなり、蒸散が促進されて浮皮発生は軽減され、さらに糖度が高まる(図3表2)。
  3. 宮内イヨカンの果皮障害発生は、蒸散が盛んになる高温乾燥年に多く、長雨・日照不足の年には発生が少ないことから、果実の体質に大きく左右されると考えられる。その防止対策としては、その年の気象条件から発生を予測し、障害の出やすい外成り果から分割採収を行う。蒸散を抑制する被膜剤のいくつかは、障害発生を軽減する。

 [その他]
 
研究課題名:イヨカンの果皮障害防止による高品質多収技術の確立に関する研究
        :温州ミカンの品質向上に関する研究
予算区分  :県単
研究期間  :平成6年度(平成3~6年)
研究担当者:高木信雄、井上久雄、中川雅之
発表論文等:カンキツの果皮の蒸散が果実特性に及ぼす影響 園学雑誌63別1,1994、第1報~第4報
    
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