乳牛を借り腹とした体外受精胚移植による肥育素牛生産技術

[要約]
 
体外受精技術により作出された黒毛和種胚を乳牛を借り腹として胚移植しても、体内受精胚移植と変わらない受胎率及び子牛生産が得られる。また、双子牛の人工哺乳では、全乳に代用乳を添加することにより1日増体量が改善されることから、生産された体外受精胚の利用は低コストで効率的な肥育素牛の増産に有効である。
     徳島県畜産試験場・繁殖技術科
        [連絡先]0886-94-2023
        [部会名]畜産、生物工学
        [専門]増殖
        [対象]家畜類
        [分類]普及

[背景・ねらい]

体外受精技術により作出された黒毛和種の胚が利用可能となれば、体内受精胚と同様に乳牛を借り腹として低コストで効率的な肥育素牛の生産が可能となる。しかし、双子生産を目的とした場合、分娩時の事故の多発や生産された子牛が小さいことなどから損耗率が高い。そこで、体外受精胚2胚移植が肥育素牛生産に有効活用できるかどうか一連の技術を検討した。

[成果の内容・特徴]
  1. 体外受精胚の両側子宮角2胚移植では、新鮮胚(56%)と凍結胚(40%)の両者とも、体内受精胚移植と変わらない受胎率及び子牛生産が得られる(表1)。
  2. 胚移植前の発情周期9~14日目から卵胞刺減ホルモン製剤(FSH-R、アントリン)12㎎を3日間漸減投与し、人為的に複数の黄体を誘起した受胚牛に体外受精胚の新鮮胚を両側子宮角2胚移植することによって受胎率の向上が図られる(表2)。また、10%エチレングリコール(EG)及び10%メチルセルソルプ(MC)を耐凍剤としたダイレクト移植法は、体外受精胚凍結胚移植の簡易化に有効である(表3)。
  3. 妊娠末期牛では分娩約24時間前に体温及び血中プロジェステロン値の低下が認められる。したがって、体温低下後に分娩予告器を分娩牛の膣深部に装着すれば、胎子娩出の約40分前に警報での予告ができる。
  4. 精乳期間中、全乳に代用乳を2.5%添加することにより、双子牛の1日増体量を改善することができる(表4)。                                                                              

[成果の活用面・留意点]

  1. 体内受精胚を活用した肥育素牛生産は、実用化技術としての普及性が高い。ただし、双子分娩前後の母牛の飼養管理に注意するとともに、双子産子は小さいため各個体に応じた給与量・離乳時期を調整し、下痢防止等の疾病予防を指導する必要がある。

 [その他]
 
研究課題名:体外受精技術を活用した良質胚多量確保技術の開発
予算区分  :国補(地域バイテク)
研究期間  :平成7年度(平成3~7年)
研究担当者:川島迪夫、後藤充宏、笠井裕明、小賀野義一、近藤正治、鴻野文男
発表論文等:l)牛体外受精胚の移植成績、徳島畜試研報。33号、1~5、1992。
        2)複数黄体誘起受胚牛への移植における受胎性、徳島畜試研報、35号、5~9、1994。
 
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