牛体外受精滑胚及び未受精卵子の効率的凍結保存法

[要約]
 
体外受精胚EFS・GFS(ガラス化溶液)で超急速凍結しても高率に生存胚が得られる。また、受精前の卵子(未受精卵)でも1.6Mプロピレングリコール(耐凍剤)を用いて凍結保存すると低率ながら生存卵子が得られる。これらの新技術は凍結操作の簡易化及び雌側からの改良に役立つ。
     徳島県畜産試験場・肉牛科
        [連絡先]0884-22-2938
        [部会名]畜産、生物工学
        [専門]繁殖
        [対象]家畜類
        [分類]研究

[背景・ねらい]

受精卵において、今までの凍結保存技術は高額な凍結保存機器並びに煩雑な操作を必要とするため、低コストでかつ簡易化が求められている。一方、受精前の卵子の凍結保存が可能となれば、体外受精技術を利用することにより世代を越えた交配が可能となり、凍結精液による雄側からの改良のみならず凍結卵子による雌側からの牛の改良ができ、牛群改良のスピードアップが期待できる。そこで、受精卵の簡易的なガラス化凍結保存方法の開発、並びに未開発な未受精卵子の凍結保存方法を検討した。

[成果の内容・特徴]
  1. EFS(40%エチレングリコール、18%フィコール、0.3Mシュークロース)で凍結した胚の生存率は平衡時間1、2分区で高く(77.74%)、GFS(40%グリセリン、18%フィコール、0.3Mシュークロース)では全平衡時間区において生存胚が得られ、中でも4分区が72%で最も高い値を示した(図1)。
  2. EFS及びGFSにより凍結融解後移植(2胚)した14頭のうち合計10頭が妊娠し、6頭が分娩した。
  3. 成熟前の卵子を0.2M以下のシュークロース含む1.6Mプロピレングリコールで凍結保存した場合(冷却速度0.3℃/分、液体窒素投入温度-30℃)、融解後成熟培養及び体外受精することにより、低率(0.6~2.2%)ではあるが移植可能な胚盤胞期胚が発生し(図2)、発生した胚の移植により1頭の子牛を得た。
  4. 凍結保存剤として1.6Mプロピレングリコールを用い成熟卵子を凍結した場合、1.0℃/分以下の冷却速度(液体窒素投入温度-30℃)では融解後の発生能に影響しない(表1)。また、凍結融解成熟卵子から体外受精後発生した胚盤胞期胚の移植により2頭の子牛を得た。                                                                            

[成果の活用面・留意点]

  1. 体外受精で得られた胚盤胞期胚のガラス化凍結保存法は融解後、高率に生存胚が得られ、簡易な凍結保存法として普及性が高い。また、受精する前の卵子の凍結保存は可能であり、成熟の有無に関わらず凍結融解後子牛まで発育するが、その発生能は低率である。

 [その他]
 
研究謀題名:体外受精技術を活用した良質胚多量確保技術の開発
予算区分  :国補(地域バイテク)
研究期間  :平成7年度(平成3~7年)
研究担当者:立川進、音井威重、小山信幸、山本憲、近藤正治、北村聡、小倉朋和
発表論文等:1)Developmental capacity of bovine oocytes cryopreserved after maturation in vitro and of frozen-thawed bovine embryos derived from frozen mature oocytes. Theriogenology 38, 1992.
2 ) Successful vitrification of bovine biastocysts, derived by in vitro maturation and fertilizason. Mol.Reprod.Dev.34,1993.
3) Developmental capacity of bovine oocytes frozen in different cryoprotectants. Theriogenology 40,1993.
4) Developmental competence of bovine oocytes frozen at different cooling rates. Cryobiology 31,1994.
 
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