クワ葉の褐変斑より分離したPhoma属類似菌とその温度反応

[要約]
 
晩秋期のクワ葉の褐変斑からクワ病害としては未記載のPhoma属類似菌を分離した。病斑形成は15~20℃で促進され、25℃以上で著しく抑制された。生育最適温度は20~25℃、分生子形成最適温度は25℃であった。
愛媛県農業試験場蚕業支場・研究指導室・病理バイテク班
[連絡先]0893-25-3039
[部会名]蚕糸
[専門]作物病害
[対象]工芸作物・桑
[分類]研究

[背景・ねらい]

愛媛県の晩秋期の桑園において、褐変斑を示す罹病葉が高い頻度で見いだされた。本病は晩々秋、初冬蚕期のクワの葉質低下を招くことから、その防除法の確立が望まれている。
そこで、防除法を検討するため本菌の分離を行い生理的性質を調査した。

[成果の内容・特徴]
  1. 罹病クワ葉から分離され、病原性を有していた糸状菌が12菌株あった。そのうちの8菌株についてはPhoma属類似菌と判定されたが、クワの病原菌としては現在Phoma属菌の記載が無い。
    この菌の病徴は、病斑は同心円形で、周辺部は赤褐色、中心部は淡褐色で表面がでこぼこしている。新しい病斑はクワ褐斑病(Phloeospora kuwaecola)に類似し、病害が進むとクワ葉枯病(Ascochyta moricola)に類似してくる。また、古い病斑は中心部が乾燥して裂けることが多い。
    分生子の大きさ及び特徴は、約6.6×2.9μmの長楕円形で隔膜はほとんど無い(1%程度1ないし2隔膜がある)。油滴は、分生子の両端に2個あるものが1%程度見られるが、ほとんどの分生子には確認できない。また付属糸やβ胞子も確認されなかった。
    分生子殻の大きさ及び特徴は、約200μmの球形で周辺に空中菌糸は無く、色は淡褐色である。
  2. 「しんいちのせ」の切り取り葉に菌叢を接種したところ、最も病斑形成が進む温度は付傷、無傷とも15~20℃であった。25℃以上になると病斑形成は少なく、かつ進展は遅かった(表1)。
  3. 各種培地上での形態は明瞭な円形集落を形成し、PSA及びPDA培地では中心部は薄い灰色であるが菌叢の周辺部は白色となった。また分生子は通常形成されず、菌叢の表面をメスで削り取ると分生子の粘塊が形成された。乾燥クワ葉35g/リットル煎汁液(以下M)を含んだ培地では分生子が培地と菌最の間に多数形成された。
  4. PSA培地上での最適生育温度は20~25℃である(図1)。MA培地上での分生子形成は5~30℃で認められ、最適温度は25℃とみられる(表2)。
  5. 「しんいちのせ」の切り取り葉に、洗浄した分生子懸濁液を接種したところ、懸濁液とMを等量ずつ混合したもので発病率は100%と高く、水と混合したものは17.2%と低かった(分生子濃度4×10057g.jpg (1733 バイト))。また、Mとの混合区で、接種する分生子濃度が低く、無傷の場合、病斑が大きかった(表3)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 今回分離した菌は、最適生育温度の性質上、比較的気温の低い蚕期(春蚕期及び晩秋蚕期以降に発生することと一致する)で多発する恐れがある。また、かなり以前には、クワ病害としてPhoma属の記載があったが、現在は、病名変更がなされPhoma属の記載はない。
    今回の分離菌は、非常にPhoma属に近い特徴を有しているが、他の属との比較同定が今後の課題である。

 [その他]
 
研究課題名:県単
研究期間:平成8年度(平成7年~8年)
研究担当者:板谷俊宏
発表論文等:蚕糸昆虫研報,17:63~82(1996)・日蚕関西講要,62:22(1996)
 
目次へ戻る