珠心胚実生を用いないカンキツ合成周縁キメラ作出法

[要約]
 
珠心胚実生が得られない単胚性品種や既存の優良品種を穂木とし、上歴軸径の太い大ユズ、ユズ、紅まどか等の実生を台木に用い、茎頂接ぎ木法により新梢からくさび形に切り出した被芽を、2品種同時に接ぎ込む手法によって、カンキツ合成周縁キメラ作出が可能である。
愛媛県立果樹試験場・栽培育種室
[連絡先]089-977-2100
[部会名]生物工学
[専門]育種
[対象]カンキツ類
[分類]研究

[背景・ねらい]

近年、カンキツ類の珠心胚実生の寄せ接ぎから、人為的に合成周縁キメラを作出する手法が開発され、従来の育種法より直接的に耐病性品種等の作出が可能な技術として期待されている。しかしこれまでの方法では、単胚性品種や既存の優良系統を直接用いた組み合わせができない。また、珠心胚実生は親品種に比べてある程度の活着率変異を持っていることが多いため、同じ組み合わせの個体を複数育成して優良個体を選抜する必要がある。
こうした問題を解決するためには、直接新梢同士を接ぎ木し、その接合面から不定芽を発生させる必要があり、その手法について検討する。

[成果の内容・特徴]
  1. 検討した手法ほ、カンキツのウイルスフリー化のために当初用いられていた、割り接ぎによる茎項接ぎ木法を応用し、モヤシ状に育成した台木実生に、伸長中の新梢からくさび形に切り出した腋芽を2品種同時に接ぎ込む方法である(図1)。
  2. 台木として従来のカラタチに代えて、上胚軸茎の太い大ユズ、ユズ、紅まどか等の実生を用いることにより、肉眼での処理が可能である(表1)。
  3. 活着率は良好で、接ぎ木操作の熟練により80%以上の活着率が得られる(表2)。
  4. 活着後切断処理した接合面から、珠心胚実生を用いた場合と同様の不定芽の発生が認められたので、様々な組み合わせで、接ぎ木キメラ個体の作出が可能である。
[成果の活用面・留意点]
  1. 接ぎ木の処理効率は、珠心胚実生を用いる方法に比べて遜色無いが、切断処理後の不定芽発生率はやや劣る。
    珠心胚実生を用いる方法では、育成した苗木に長大なトゲが多く発生し栽培上の障害となるが、この手法ではその心配がない。
    また、珠心腫実生を用いる方法では、種子を貯蔵することにより年間を通じて処理が可能であるが、新梢を用いる場合は処理時期が限定される。

 [その他]
 
研究課題名:キメラ(接ぎ木雑種)作出新手法開発試験
予算区分:委託試験
研究期間:平成6~8年
研究担当者:喜多景治・薬師寺弘倫・別府英治
発表論文等:珠心胚歴実生を用いないカンキツ合成周縁キメラ作出法の開発 園芸学会雑誌 第65巻別冊2、1996
 
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