醤油醸造関連微生物によるフェルラ酸及びp‐クマル酸の揮発性フェノール類への変換


[要約]
醤油醸造においては、耐塩性Candia 酵母以外にも醤油の香気成分である4-エチルグアヤコールなどの揮発性フェノールの生成に関与する耐塩性Staphylococcus 及びBacillus 属の細菌が存在している。それらはエチルフェノール類の中間代謝物であるビニルフェノール類を生成する。

香川県食品試験場・発酵食品試験場
[連絡先] 087-881-3177
[部会名] 食品
[専門] 加工利用
[対象] 微生物
[分類] 研究


[背景・ねらい]
醤油はその特性として、味、色、香りが重要視される。醤油の特徴香とされる4-エチルグアヤコールは、製品中の1ppm程度の存在が品質の優位性を増すといわれる。4-エチルグアヤコールや4-エチルフェノール等の揮発性フェノール類は、耐塩性Candida属酵母により、フェルラ酸などから生成されることが報告されている。今回は醤油の香気改善への知見を得るために、醤油醸造過程で検出されたことのある酵母以外の微生物について、特に今まで報告の認められなかった高濃度食塩存在下におけるこれら微生物のフェルラ酸等から揮発性フェノール類への変換能の有無について検討を行った。

[成果の内容・特徴]
  1. 麹菌や麹の汚染微生物Micrococcus属細菌及び醤油乳酸菌等はフェルラ酸及びp -クマル酸から揮発性フェノール類を生成しない。(表1
  2. Bacillus subtilis及びB. megaterium等のBacillus属細菌は醤油諸味中では増殖できない。しかしその菌体が10 cells/ml以上存在すれば、4-エチルグアヤコール等の生成には至らないが、その中間代謝物であるビニルフェノール類を生成する。(図1
  3. 醤油麹から分離した細菌Staphylococcus sp.(St.10206株等)は20%食塩耐性を示し、ビニルフェノール類を生成するが、エチルフェノール類は生成しない.(図1

[成果の活用面・留意点]
  1. 醤油製造において、主たる雑菌とされる、B. subtilis等が過剰に存在するとそれに伴う麹菌の増殖阻害や酵素生産の低下、酪酸生成による不潔臭の付与等悪影響を及ぼす。
    今回の結果は、醤油醸造微生物以外にも醤油香気形成に関与する微生物が多数存在することを示している。耐塩性を有するStaphylococcusBacillus属細菌が多数存在するとフェルラ酸等からビニル化合物の生成が促進され、異臭を生成するとともに、これらビニル化合物がC.versatils群酵母により4-エチルグアヤコールに変換される可能性があることを示している。4-エチルグアヤコールが過剰に生成されると、これが有する特徴的な薬品臭が強くなり、かえって醤油の商品価値の低下をまねくおそれがある。醤油の調和のとれた香気生成の面からも、これら麹や諸味中の細菌の衛生管理がより一層必要である。
 
[その他]
研究課題名:有用微生物育種・改良事業
予算区分:県単
研究期間:平成9年度(平成8~10年度)
研究担当者:末澤保彦、吉岡直美、森 治彦
発表論文等:日本農芸化学会誌、72(1)43-49(1998)

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