小塊カルスを利用したアグロバクテリウム法による形質転換イネの作出技術

[要約]
 
アグロバクテリウム法によるイネ形質転換において、カルス誘導期間28日の再分化能力の高い小塊カルスを利用することで、再分化個体及び形質転換体を効率よく作出できる。また、遺伝子導入法として、アグロバクテリウム法の方がエレクトロポレーション法よりも、操作が簡便で、再分化個体に対する形質転換体作出の割合も高い。    
愛媛県農業試験場・作物育種室
[連絡先]089-993-2020   
[部会名]生物工学  
[専門]バイテク
[対象]稲類
[分類]研究

[背景・ねらい]

今までにアグロバクテリウム法による形質転換イネ(松山三井:ダイズ・グリシニン遺伝子)は作出できていたが、アグロバクテリウム感染カルスに対する再分化率は低いものであった。再分化率を高めるためには、再分化能力が高く、ストレスに強いカルスを誘導することが必要である。
そこで、松山三井のアグロバクテリウム法による形質転換体作出の効率向上のために、再分化率が高く、多くの形質転換体を得ることのできる完熟種子からのカルス誘導期間を検討した。また、その結果と既に確立しているエレクトロポレーション法(松山三井)との再分化個体に対する形質転換割合を比較し、アグロバクテリウム法による形質転換体作出の優位性を検討した。

[成果の内容・特徴]
  1. 松山三井の再分化能力の高いカルス(小塊)は、N6墓本培地にカザミノ酸(300mg/リットル)、プロリン(2878mg/リットル)、2,4D(2mg/リットル)、ショ糖(30g/リットル)を加え、支持体にゲルライト(4g/リットル)を用い、前培養(継代:同培地)を行うことで誘導できる(図1)。また、再分化個体は、MS基本培地にカザミノ酸(2g/リットル)、アスパラギン酸(1g/リットル)、グルタミン(1g/リットル)、ショ糖(30g/リットル)、ソルビトール(30g/リットル)、NAA(1mg/リットル)、カイネチン(5mg/リットル)を加え、支持体としてアガロース(8g/リットル)を用いることで作出できる。
  2. カルス誘導期間を28日とすることで、アグロバクテリウム感染カルス数(再分化能力が高く、ストレスに強いカルス:小塊)に対して、10~20%の再分化個体数、5~11%の形質転換体数を得ることができる(表1)。
  3. アグロバクテリウム法(カルス誘導期間28日、前培養期間12日)とエレクトロポレーション法との再分化個体に対する形質転換割合を比較した結果、アグロバクテリウム法の方が約6%高い(表2)。また、アグロバクテリウム法に用いるカルス培養は、エレクトロポレーション法に用いるブロトプラスト培養に比べ、操作も簡便である。
    これらより、形質転換イネ作出にはアグロバクテリウム法の方が効率的である。

[成果の活用面・留意点]

  1. 再分化能力の高い小塊カルスを誘導し、アグロバクテリウム感染に使用できたことで、形質転換イネを効率よく作出できる。
  2. 前培養時のカルス継代は、小塊のみをピンセットですくい上げるように行う。

 [その他]
 
研究課題名:実用的な遺伝子組換え作物の作出
予算区分:県単
研究期間:平成11年度(平成7年度~)
研究担当者:淺梅英記、栗坂伸之
発表論文等:1.遺伝子組換えによるイネヘのダイズグリシニン遺伝子の導入 1.グリシニン遺伝子と選択マーカー遺伝子をタンデムにつないだプラスミドの導入,育雑,47(別2),304,1997.
 
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