土壌の酸性化に起因する裸麦の葉枯れを伴う生育障害
[要約]
香川県では近年増加傾向にある裸麦
「イチバンボシ」
の葉枯れ、分げつ及び草丈の抑制等の生育障害の原因は、土壌の過度の酸性化による
酸性障害
である。この障害は土壌pH5.0程度から発生し始め、4.5以下で激しくなる。対策は
石灰資材の施用
により土壌をpHを上昇させるのが有効である。
香川県農業試験場 品種開発 [連絡先]087-889-1121 [部会名]水田・畑作 [専門] 栽培 [対象] 麦類 [分類] 指導
[背景・ねらい]
県内の裸麦産地において、葉枯れを伴った生育不良により収量が著しく低下する生育障害が発生した。民間流通への移行が進む中、生産と品質の安定性確保は重要な課題であることから、発生原因を明らかにして、対策の早急な確立を図るための参考資料とする。
[成果の内容・特徴]
症状は、分げつ期は生育が悪く、茎立ち開始頃より葉枯れ症状が発生し、草丈、分げつが極端に劣る(
写真1
)。葉枯れ症状は下葉の葉先や周辺部から発生し、枯死部や黄化部には褐色斑や褐色斑が連なってスジ状となる。根量は少なく、太短い根や先端が丸い根が混じる。最初はほ場のごく一部にスポット状に見られる程度であるが、年々拡大してほ場全体に広がる。葉枯れ症状の発生程度が高い場合は、短稈で穂数も少なくなり収量は半減する(
表1
)。
葉枯れ症状の発生程度の高いほ場の土壌のpHは4.5以下と低く、置換性マグネシウム濃度は欠乏症の発生が懸念される程度に低い(
表2
)。
症状については顕著な葉枯れを伴う点、マグネシウム欠乏の特有の緑色斑点が認められない点、硫酸マウネシウム溶液を葉面散布 しても症状に変化が見られなかった点でマグネシウム欠乏症とは異なる。
発生は土壌消毒しても症状は変化しないので、土壌病害は関与していない(
表3
)。
発生は土壌のpHを上昇させることで葉枯れ症状が軽微になり、健全圃場の土壌pHを低下させることで葉枯れが再現される。
土壌pH障害の関係ではpH4.5以下で発生が顕著で5.0程度では軽微な葉枯れが発生することもあるが生育収量への影響は小さく 5.7以上では発生しない(
表2
,
3
)。なお、pH4.5程度では小麦には外見上の障害は発生しない(
表3
)。
対策としては、発生圃場やpHの低い圃場では、石灰質資材を施用して土壌pHをを5.5程度に上昇させるのが有効である。
[成果の活用面・留意点]
原因については、酸性化とそれに伴う要素欠乏及び過剰症が複合的に発生している可能性もある。
適用にあたっては、障害の発生程度やpH等の土壌条件に応じて、施用する石灰資材の種類や量及び施用体系を構築する必要がある。
[その他]
研究課題名:稲・麦・大豆の品種と栽培技術に関する試験研究
予算区分:県単
研究期間:平成12年度(平成11年~12年)
研究担当者名:山田千津子・宮下武則
発表論文等:香川県農業試験場研究報告、54号、2001
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