研究活動報告

2020年北農賞を受賞

情報公開日:2021年1月22日 (金曜日)

昨年12月、公益財団法人北農会主催の北農賞贈呈が行われ、農研機構北海道農業研究センターは報文部門および技能部門で栄えある北農賞を受賞しました。

報文部門

受賞業績名

ジャガイモシロシストセンチュウの緊急防除対策技術 (北農 第87巻4号 掲載)

受賞者名

農研機構 北海道農業研究センター 伊藤 賢治、奈良部 孝
(地独)北海道立総合研究機構 農業研究本部 北見農業試験場 小野寺 鶴将

概要

ジャガイモシロシストセンチュウ(以下Gp)は、ばれいしょの重要害虫で、ジャガイモシストセンチュウとともに、輸入植物検疫の対象に指定され、国内への侵入防止対策が取られてきました。2015年8月網走市の圃場において、Gpの発生が確認され、2016年秋以降、Gpの蔓延防止のため、植物防疫法に基づく緊急防除が開始されました。土壌くん蒸剤(1、3-ジクロロプロペン油剤、以下D-D剤)の処理および捕獲作物の栽培が実施されました。しかし、我が国には、Gpの防除に関する知見がなかったことから、これらの技術のGpの密度低減効果を評価するとともに、これらの技術の組み合わせによりGp密度を検出限界以下にするための防除体系を検討しました。さらに、極低密度のGpを検出するための生存Gp検出法についても検討しました。

D-D剤処理ではGp密度が平均して処理前の5.2%に、捕獲作物栽培では11.6%に低下しました。D-D剤処理2回と捕獲作物栽培1回を組み合わせた3回防除を実施することにより、Gp発生圃場の96%でGpが検出限界以下となりました。このように、化学農薬と捕獲作物栽培を組み合わせたユニークな防除体系の有効性が現地実証により明らかにされ、防除効果を最大化するための要件や効果の検証方法、防除コスト等が明らかとなりました。本成果は学術的な価値のみならず、国の緊急防除に直ちに導入された結果、発生から4年後の令和元年には当初発生面積の93%でGpが非検出となるなど、実用面での価値も高いです。本成果が、Gp発生地域での再発防止ならびに作付禁止圃場でのばれいしょ生産再開に大きく貢献し、北海道農業の発展に寄与しました。

受賞者写真
報文部門受賞者(左から) : 伊藤 賢治 氏、奈良部 孝 氏

技能部門

受賞業績名

カボチャ収穫作業軽減技術の考案

受賞者名

農研機構 北海道農業研究センター 菅原 保英、佐藤 勝彦、椎名 智文

概要

カボチャの収穫作業は、1)果実を蔓から切り離し、圃場内の複数個所に集める、2)果柄を数ミリ残して切り落とす、3)果実を拾い上げてコンテナに収納するという工程があり、いずれの作業も1玉2kg程の果実を人力で持ち運ぶ重労働です。間き取り調査の結果、特に2)は中腰で行うことに加えて、従来の果柄切り鋏は固い果柄の切り落としに力を要するので手首や腕に、3)は、かがんだり立ったりを繰り返すため、腰や膝に負担がかかることが判明しました。そこで、果柄切り鋏とカボチャピッカーを考案しました。

果柄切り鋏は、市販の立作業用の草刈り鋏の柄に果柄切り鋏、刃の部分にスペーサーを装着したものです。てこの原理を利用して、立位で従来の果柄切り鋏よりも少ない力で、また、果柄を数ミリ残して切り落とすことが可能となり、30%の作業効率化が図られました。

カボチャピッカーは、市販のタマネギピッカーの掻き込み部と搬送部を改良したものです。掻き込み部のパドルの強度を高め、搬送チェーン上部にネットを装着することで、地面からカボチャの果実を拾い上げ、コンベア上での果実の転がりによる傷付きをなくし、腰の高さ程度まで持ち上げることが可能となりました。

いずれの技術も特許出願を行うとともに、「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」の「カボチャのスマート栽培・収穫の実証」(代表機関 : 農研機構北海道農業研究センター)の現地実証圃場で次年度実証試験を行うなど、地域への普及を図っていきます。

受賞者写真
技能部門受賞者(左から) : 佐藤 勝彦 氏、菅原 保英 氏、椎名 智文 氏