写真は(公財)森永奉仕会提供
受賞者
高山喜晴(畜産物研究領域)
内容
乳中(特に初乳)に多く含まれる鉄結合タンパク質であるラクトフェリンは、強力な抗菌活性・抗ウィルス活性を持つため、免疫系が未成熟な新生児の生体防御に役立っており、その利用技術の開発がすすめられてきました。現在では、チーズホエーや脱脂乳から高純度のラクトフェリンを精製する技術が確立され、粉乳やヨーグルトに添加される他、サプリメントとしても利用されています。
一方、ラクトフェリンは食品由来のタンパク質でありながら、抗がん作用・脂質代謝改善効果・血管新生調節作用・細胞保護作用(アポトーシス抑制活性)など他の天然物に見られない強力な生理活性を示すことが知られています。
受賞者は、これまでの研究で、ラクトフェリンが、(1)線維芽細胞の遊走やコラーゲンゲル収縮活性を促進し、創傷治癒を促進する機能をもつこと、(2)骨芽細胞の分化や増殖・カルシウム沈着(石灰化)を促し、骨様組織の形成を促進することなどを発見してきました。ラクトフェリンは、標的細胞の表面に発現している受容体を介した細胞内情報伝達経路の活性化により、その機能を発揮していると考えられています。さらに、受賞者はLDL受容体関連タンパク質1(LRP-1)が、線維芽細胞において古典的MAPキナーゼ経路を活性化し、これらの増殖・遊走を促進することを明らかにしてきました。
しかしながら、既に知られているラクトフェリン受容体だけでは、ラクトフェリンのアポトーシス抑制機能を説明することができないため、本研究課題によってこれらを担う受容体や細胞内情報伝達機構を解明することを目指しています。本研究課題は、(公財)森永奉仕会に申請された「小児の栄養・健康,公衆衛生並びにこれに関連する乳製品等の品質改善に関する調査・研究」のうち最も優れた調査・研究に贈られる森永賞を受賞しました。