キュウリの「ヘタ」と「実」の切り口をこすりあわせることにより渋味を低減できる
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要約
キュウリ果実を切断すると、維管束から渋い液が滲出する。渋味成分(アク)の主体はギ酸である。果実のツル側の先端部分(ヘタ)を切断し、残った部分(実)と切り口同士をこすりあわせると、果実中の維管束液の量が減少し、果実の渋味を低減できる。
- キーワード: キュウリ、ギ酸、渋味、維管束、アク抜き、食味改善
- 担当:野菜茶研・野菜・茶の食味食感・安全性研究チーム
- 代表連絡先:電話050-3533-3863
- 区分:野菜茶業・野菜品質・機能性、食品
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
キュウリ果実のヘタ(果実のツル側の先端部分)を切断し、実(残った果実部分)と切り口同士をこすりあわせるとアクがとれるという伝承があるが、真偽は定かではなかった。そこで、アクの原因物質を解明し、アク抜きのメカニズムを明らかにする。
成果の内容・特徴
- キュウリ果実を輪切りにすると、果皮近傍の維管束から液が滲出する。この液には渋味がある。
- 維管束から滲出した液には100mg/L以上の濃度でギ酸が含まれ(図1)、またギ酸塩の水溶液は維管束滲出液同様の渋味がある。一方、果実全体から調製した液中ではギ酸は定量限界以下となり検出されないことから、果実の維管束中に局在するギ酸が渋味に寄与すると考えられる。
- あらかじめ果実のツル側の端(ヘタ)を切りとり(図2)、残りの部分(実)とこすりあわせてから、果実中央部で切断すると、この処理をせずに切断した時と比べて、切り口に滲出する液の量は低下する(図3)。
- ヘタと実のこすりあわせによって、官能的にも渋味が低下する(図4)。本処理によって、果実の維管束中のギ酸を含む液が排出されるため、渋味が低下するものと考えられる。
- ヘタと実をこすりあわせる調理手法は、果実の渋味を低下させるので、アク(渋味)抜きに有効である。
成果の活用面・留意点
- キュウリの果汁全体が渋いのではなく、渋味が強いのは、キュウリの切り口に滲出する液のみである。この滲出液は短時間に固化し、固化すると渋味を示さなくなる。ヘタと実のこすりあわせによる渋味の低下は、切断直後のキュウリを食べる際に特に認知しやすい。
- 調理方法として汎用されるキュウリの板ずりについても、果皮近傍の組織を破壊するため、維管束に溜まった渋味成分を除去する効果が期待できる。
具体的データ
その他
- 研究課題名:野菜・茶の食味食感評価法の高度化と高品質流通技術の開発
- 中課題整理番号:311g
- 予算区分:委託プロ(加工)
- 研究期間:2006~2009年度
- 研究担当者:堀江秀樹、玉木有子(新潟医療福祉大)
- 発表論文等:堀江、玉木(2008)日本調理科学会誌、41:378-382