病虫害複合抵抗性の暖地向き早生緑茶用品種「なんめい」

要約

「なんめい」は、クワシロカイガラムシと輪斑病には「強」の、炭疽病には「中」の抵抗性を示す。摘採期は「さえみどり」と同等の早生で、収量は「やぶきた」、「さえみどり」より優れ、製茶品質は「さえみどり」と同等である。

  • キーワード:チャ、 なんめい、クワシロカイガラムシ、輪斑病、炭疽病、早生
  • 担当:果樹・茶・茶
  • 代表連絡先:電話 0993-76-2126
  • 研究所名:野菜茶業研究所・茶業研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

日本の茶栽培においてクワシロカイガラムシは重要害虫であり、輪斑病と炭疽病は重要病害である。茶栽培面積の約75%を占める「やぶきた」をはじめ国内で普及している主要な緑茶品種には、これら3病虫害全てに抵抗性の品種は無い。そこで、茶の有機栽培、減農薬栽培を促進することを目指し、3病虫害に抵抗性で高品質な新品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「なんめい」は、クワシロカイガラムシと輪斑病に抵抗性で樹勢が強い「さやまかおり」を種子親、製茶品質に優れる早生系統「枕崎13号」を花粉親として、1992年に交配したF1実生群の中から選抜された系統であり(図1、図2)、「さやまかおり」由来のクワシロカイガラムシ抵抗性遺伝子MSR1に連鎖したDNAマーカーを用いて選抜された初めての系統である。
  • 「なんめい」のクワシロカイガラムシ抵抗性は「強」、付傷接種による輪斑病抵抗性は「強」であり、炭疽病拡大抵抗性は「中」である。赤焼病およびもち病抵抗性は「弱」である(表1)。
  • 「なんめい」の一番茶における萌芽期と摘採期は、「さえみどり」と同等の早生である(表2)。
  • 「なんめい」の収量は、「やぶきた」、「さえみどり」より優れ、新芽の葉色は濃緑である(図2)。一番茶の製茶品質は「やぶきた」より優れ(表2)、「さえみどり」と同等である。
  • 「なんめい」の耐寒性は、赤枯れ抵抗性に関しては「やぶきた」よりやや劣り、「さえみどり」と同等である。また、裂傷型凍害には弱い(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 「なんめい」は、早生の病虫害複合抵抗性の品種候補であり、減農薬によるコスト削減、有機栽培による付加価値生産が期待される。
  • 早生であるため、一番茶新芽の霜害リスクが高く、防霜対策が必要である。また、寒冷地での栽培には適さない。
  • 梅雨等の連続降雨条件下では、炭疽病が発生することがあり、防除が必要となる。

具体的データ

図1 「なんめい」の育成系統図図2 「なんめい」の一番茶新芽
表1 「なんめい」の病害虫抵抗性
表2 「なんめい」の栽培・加工特性

(谷口郁也)

その他

  • 中課題名:多様なニーズに対応する安定多収な茶品種の育成と安定生産技術の開発
  • 中課題番号:142f0
  • 予算区分:実用技術、交付金
  • 研究期間:1992~2011年度
  • 研究担当者:谷口郁也、吉田克志、萬屋宏、根角厚司、荻野暁子、佐波哲次
  • 発表論文等:1)萬屋ら(2010)九病虫、56:92-98
    2)根角ら「なんめい」品種登録出願2012年5月11日(第27028号)