パスタ適性に優れる日本初のデュラム小麦新品種候補「セトデュール」
要約
「セトデュール」は、日本で初めて育成されたデュラム小麦品種である。普通系小麦よりも良質のセモリナがとれ、スパゲッティの食感に優れる。成熟期は「農林61号」並の中生で、短稈で耐倒伏性に優れ、収量性は「農林61号」と同程度である。
- キーワード:デュラム小麦、セモリナ、パスタ、穂発芽、赤かび病
- 担当:作物開発・利用・小麦品種開発・利用
- 代表連絡先:電話029-838-7497
- 研究所名:近畿中国四国農業研究センター・水田作研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
4倍体種(ゲノムAABB)のデュラム小麦(Triticum turgidum L. subsp. durum (Desf) Husn)は、6倍体種(AABBDD)の普通系小麦(T. aestivum L.)に比べて成熟期が遅く、赤かび病に弱く、白粒で穂発芽性が弱いため、国内ではほとんど栽培されておらず、これまで本格的な品種育成は行われていない。瀬戸内地域は日本国内では温暖で、登熟から収穫期の降雨が比較的少ないことからデュラム小麦の栽培の可能性があると考えられる。近年では、国産のデュラム小麦を使用したパスタについての要望もある。そこで瀬戸内地域での栽培を目指して、普通系小麦品種「農林61号」並の成熟期となるデュラム小麦品種を育成する。
成果の内容・特徴
- 「セトデュール」は、瀬戸内地域で栽培可能なデュラム小麦を目標として、米国のデュラム小麦品種「Produra」を母に、イタリアのデュラム小麦品種「Latino」を父として交配を行い、派生系統育種法によって選抜固定を図ってきたものである。2014年度の世代は雑種第14代(F14)である。
- 「セトデュール」は、「農林61号」と比較して以下の特徴がある。播性の程度はIで、出穂期は4~5日程度遅く、成熟期は1~3日程度遅い中生である(表1)。
- 稈長は短く、耐倒伏性は強い。穂数は少なく穂長は短い、芒は長く、ふ色は黄褐である(表1)。
- 穂発芽性は"易"で、赤かび病は"かなり弱"で、赤さび病やうどんこ病は"強"の抵抗性である(表1)。
- 千粒重と容積重は大きく、収量は同程度である。粒の色は黄の白粒で、原麦粒の見かけの品質は同程度である(表1)。
- 製粉歩留は同程度であるが、セモリナ生成率は高い。60%粉の明度は低いが、赤み(くすみ)が低く、黄色みが高く、黄色色素が多い(表2)。
- スパゲッティの色調や官能評価は輸入のCWAD(カナダ産ウエスタンアンバーデュラム)より劣るが、「農林61号」や「ミナミノカオリ」よりは黄色みが強く、官能評価に優れる(表2、図1)。
成果の活用面・留意点
- 普及対象地域は瀬戸内地域の平坦地である。
- 赤かび病に極めて弱いため、適期防除を徹底する。
- 除草剤、殺菌剤などの薬剤は小麦の登録がある薬剤が使用できる。
- 成熟期が「農林61号」並みで、穂発芽耐性が弱いため、適期播種、適期収穫に努める。
- 農産物検査は小麦、ランク区分はパンおよび中華めん用小麦を適用する。
具体的データ
その他
- 中課題名:気候区分に対応した用途別高品質・安定多収小麦品種の育成
- 中課題整理番号:112d0予算区分:交付金
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2001~2015年度
- 研究担当者:高田兼則、谷中美貴子、石川直幸、船附稚子、長嶺敬、大楠秀樹(日本製粉)
- 発表論文等:高田ら 「セトデュール」品種登録出願第30631号(2015年11月19日)