プレスリリース
口蹄疫等に関する国際獣疫事務局(OIE)を通じたモンゴル国への技術的支援の実施について

情報公開日:2016年1月 6日 (水曜日)

ポイント

平成28年1月から、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所は、国際獣疫事務局(OIE)の承認を受け、モンゴル国中央獣医研究所に対して、診断技術の向上等を目的とした「口蹄疫等の越境性動物疾病に関するツイニング事業」(技術的支援)を開始します。

背景

  • 口蹄疫は伝染力が強く、感染家畜の経済的な価値が大きく失われることから、国際的にも最も恐れられている家畜の伝染病です。我が国でも平成22年4月に宮崎県において本病が発生し、大きな経済的被害が生じましたが、関係者一体となった防疫措置等により、我が国は平成23年2月に清浄国として国際獣疫事務局(OIE)1)に認定されました。現在、韓国、中国、モンゴル等のアジア周辺諸国においては、口蹄疫が発生しており、我が国ではこれらの周辺国とも協力しながら防疫対策の強化に努めているところです。
  • 農研機構 動物衛生研究所は、我が国で唯一の口蹄疫確定診断施設であるとともに、アジアにおける家畜疾病の診断、防疫等に関するOIEのコラボレーティングセンター2)に認定されており、国内外に広く貢献しています。
  • 平成28年1月から、農研機構 動物衛生研究所は、OIEに承認されたツイニング事業3)を通じ、モンゴル国中央獣医研究所に対して、口蹄疫等越境性動物疾病の診断技術の向上を目的とした技術的支援を行うことが決定しました。

内容・意義

  • 本ツイニング事業の実施期間は、平成28年1月から平成30年12月までの3年間です。
  • 現在モンゴルでは、遺伝子検査や抗体検査による口蹄疫の診断は可能です。しかし、ワクチンを用いた防疫には、口蹄疫ウイルスの血清型別や適切なワクチン株の選定が必須です。そのためには口蹄疫ウイルスの分離技術やワクチン株の選定技術が必要となります。さらにモンゴルでは、口蹄疫以外の越境性動物疾病の発生も危惧されており、それらに対する解剖・病理学的検査技術の習得も必須です。加えて、迅速で適切な診断には検査材料の適切な採取方法の習得や検査機関への輸送システムの確立が必要となります。そこで、農研機構 動物衛生研究所 海外病研究施設において、モンゴル国中央獣医研究所の研究職員が上記技術を習得すると共に、動物衛生研究所の研究職員をモンゴルに派遣し、現地での確実な習得技術の定着を目指します。
  • 2012年にモンゴル国中央獣医研究所の研究職員が、口蹄疫の診断技術の習得のため農研機構 動物衛生研究所 海外病研究施設で細胞の培養技術について研修を実施しました(写真)。今回はウイルス分離を含めた診断技術等を習得します。

今後の予定・期待

今般の技術的支援により、モンゴルにおいて口蹄疫等の越境性動物疾病に対する適切な防疫措置が講じられ、同国における経済的な被害を低減させるとともに、アジア地域全体の口蹄疫等の発生の低減及び我が国への伝播リスクの低減につながることが期待されます。

用語の解説

  • 1) 国際獣疫事務局(OIE)
    • OIEは、1924年に発足した世界の動物衛生の向上を目的とする国際機関であり、平成27年5月現在180か国・地域が加盟しています。また、WTO/SPS協定上、動物衛生及び人獣共通感染症に関する国際基準の設定機関とされています。
  • 2) OIE コラボレーティングセンター
    • OIEのコラボレーティングセンターは、特定の専門分野(動物用医薬品、新興感染症等)において技術的な支援等を行っており、26か国、49施設(2015年時点)が認定されています。また、OIEのレファランスラボラトリーは、動物疾病の診断及び診断方法に関する助言、診断に利用する標準株・診断試薬の保管等を行っており、39か国、専門家252名(2015年時点)が認定されています。
  • 3) OIE ツイニング事業
    • OIEのツイニング事業とは、OIEのコラボレーティングセンター又はレファレンスラボラトリーが、途上国の疾病診断施設に技術的支援を行うことにより、当該診断施設の能力を高め、当該診断施設が地域の疾病診断及び防疫に寄与できるようにする事業です。

2010年にモンゴル国で開催された口蹄疫防疫会議

予算:OIEの委託事業