刊行物

火傷病

カテゴリ
園芸・茶
技術紹介パンフレット
技術紹介パンフレット
研究資料
病害虫・鳥獣害
タイトル
火傷病
発行年月日
2011年11月17日
概要

火傷病(かしょうびょう)は植物病原細菌が植物に感染して発生する病気です。

果樹では、セイヨウナシ、ニホンナシ、リンゴ、ビワ、マルメロ、鑑賞植物では、ピラカンサ、サンザシ、コトネアスターなどのバラ科植物に火傷病が発生します。
火傷病は、北アメリカ、ヨーロッパ、北アフリカ、中近東、ニュージーランドのセイヨウナシやリンゴの果樹園に発生して、大きな被害を与えています。
しかし、幸いなことに、火傷病は日本では発生していません。

一度発生すると防除が難しく、大きな被害となる火傷病を防ぐには、その侵入を防止し、定着させないことが一番です。

火傷病が日本に侵入しないように、海外旅行に出かけた時に、植物防疫法によって輸入が禁止されている火傷病の宿主となる植物や果実などを国内に持ち込むことはしないで下さい。
また、万が一、火傷病が国内に侵入した場合には、火傷病の国内まん延や定着を防ぐため、火傷病の早期発見と早期防除が重要です。

日頃から果樹園を巡視、観察して火傷病の発生に注意して下さい。火傷病の症状には、花枯れ、葉枯れ、枝枯れなどがあります。
しかし、これによく似た症状を示す他の病気もあります。
果樹園を観察して「いつも見ている病気に似ているけどちょっと違う症状」を見つけたら、最寄りの植物防疫所又は都道府県の病害虫防除所に連絡して下さい。

火傷病の症状

火傷病の症状である花枯れ、葉枯れ、枝枯れ、実腐れ、枝・幹でのかいようについて解説します。

  • 花枯れ
    春季に発生する花枯れ症状は火傷病の典型的症状です。感染した花は初め水浸状となり、萎れます。別の花や幼果、近くの葉に病気が拡がり、病気で枯れた花叢、花叢葉は、りんごでは褐色に、なしでは黒色となります。温暖で湿度が高い条件下では花梗に菌泥がしみ出る場合があります。
  • 葉枯れ
    病原細菌は気孔、昆虫が食害した傷や吸汁した痕、雹害や強風でできた傷から葉に侵入します。病気になった葉は褐変または黒変します。葉の病域は葉脈から中肋へ広がり、病原細菌が葉柄を経由して枝にまで広がり枝枯れを生じる場合もあります。
  • 枝枯れ
    水分が多く軟弱な新梢や徒長枝はよく病気に感染します。新梢の症状は、初め水浸状で、その後暗緑色となり、ついには褐変または黒変して枯れます。病気になった新梢の先端部は、しばしば下方に湾曲して「shepher's crook (羊飼いの杖)」と呼ばれる特徴ある形状を示します。病気になった枝の表面にも、温暖で湿度が高い条件下では菌泥がしみ出る場合があります。
  • 実腐れ
    病原細菌は未熟果実の皮目、傷、病気にかかった短果枝から幼果に感染します。雹が降ってできた傷からも幼果に侵入・感染します。感染した部位は初め水浸状、灰緑色で、その後に褐色になります。温暖・高湿度条件下では粘質で乳白色をした菌泥がしみ出る場合があります。
  • 枝・幹でのかいよう症状
    火傷病の症状が花、新梢、果実から結果枝、亜主枝、主枝、主幹へと拡大して、主枝・主幹に「かいよう(キャンカー)」と呼ばれる症状を生じます。かいよう部は、わずかに窪んでいますが健全部との境界は不明瞭でかいよう部の識別は難しいといえます。かいよう症状となった組織では病原細菌が越冬します。春季になると、病原細菌の活動が活発になって、「かいよう」が拡大して付近の芽、新梢、枝を侵害します。かいよう部では病原細菌が増殖し、その菌泥にアリ、ハチ、ハエなどの昆虫が訪れ、これらの昆虫は病原細菌を伝搬します。病患部の樹皮を削り取った木部には特徴的な赤褐色の条斑が観察されることがあります。