果樹試験場(現・農研機構)により育成された、糖度が高くて食味の良い、皮がむきやすく種子が少なく食べやすい品種の流通が始まり、2~3月にピークを迎えます。4月以降は国産のカンキツ類の流通は端境期となり、代わってオレンジやグレープフルーツなどの輸入カンキツが増えてきます。このように、品種による成熟期・出荷時期の幅や、海外からの輸入により、年間を通じてカンキツ類を購入することができます。■ 国内のカンキツ類の 消費動向と加工需要 カンキツ類を含めた生鮮果実の消費動向を示す「生鮮果実の1世帯当たり年間支出金額」は、人口減少や食の外部化などの影響により、減少傾向で推移しています。その中で、果物加工品への支出金額の割合は年々増加しており、2019年度には8.4%を占めるようになりました(図2)3)。また、消費者を対象とした2019年(令和元年)の調査では、購入機会の多い果物加工品として、「果汁」に次いで「カットフルーツ」と回答されています。その理由としては「簡単に食べられるから」「おいしいから」などが挙げられています(図3)4)。さらに、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などの情報発信ツールの普及・拡大に伴い、見た目にもこだわったフルーツケーキやフルーツサンドなど、付加価値を高めた高級な果実加工品への新たな需要も生まれており5)、このような消費者ニーズに合わせた「食べやすい」品種などの育成、新■ 国内のカンキツ類の流通動向 わが国では様々なカンキツ類が流通しています(図1)1)2)。国産のカンキツ類として、一般的にみかんと呼ばれるウンシュウミカンの販売が初夏のハウスみかんに始まり、極早生、早生、普通と産地や品種が切り替わり、12月頃にピークを迎えます。年明けになると伊予柑、甘夏、八朔、ネーブルオレンジといった馴染みのあるカンキツ類に加え、「清見」、「不知火」、「はるみ」、「せとか」など、農林水産省いよかんあまなつはっさくきよみしらぬい図1国産カンキツの月別販売実績*および輸入カンキツの月別輸入実績***日本園芸農業協同組合連合会 平成30年産 柑橘販売年報1)より作図 4大市場(京浜、京浜衛星、名古屋、京阪神)合計**日本園芸農業協同組合連合会 令和2年度版 果樹統計2)より作図4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月4月5月6月7月8月070,00060,00050,00040,00030,00020,00010,000 (t)2018年2019年カラ河内晩柑 セミノールポンカンせとかはるみ不知火(しらぬい)清見(きよみ)甘夏(あまなつ)八朔(はっさく)伊予柑(いよかん)ネーブルオレンジ普通みかん早生みかん極早生みかんハウスみかんレモン輸入オレンジ輸入レモン輸入グレープフルーツ( )かわちばんかん特集 品種開発Ⅲ 3濵田 宏子HAMADA Hiroko高糖度で、ドリップの少ないカットフルーツ向けのカンキツ新品種「あすき」14NARO Technical Report /No.10/2021
元のページ ../index.html#14