「豊水」と同じように酸味が少しあるものの、糖度の高さと相まって濃厚な食味になります(表2)。■ 「甘太」の糖成分 リンゴやナシをはじめとするバラ科の果樹では、葉で作られた光合成産物をソルビトールに変換して果実へ転流して蓄積しています。果実が成熟していく過程においてソルビトールが様々な酵素により代謝されることで、ニホンナシの成熟果実においては主にスクロース(ショ糖)、フルクトース(果糖)、グルコース(ブドウ糖)、ソルビトールの4種類の糖が蓄積します。これらの糖は種類によって甘味の強さである甘味度が異なり、スクロースを1.0とした場合、フルクトースは1.5~1.75、グルコースは0.7~0.8、性)を持ちます。この自家不和合性を制御している遺伝子が同じ型となっている「あきづき」、「秋麗」、「筑水」などの品種とは互いに受粉・結実ができませんが、その他の主要品種である「幸水」、「豊水」とは互いに受粉・結実が可能です2)。 果実の形は広楕円形で、果実の大きさは530g程度と大きい品種です。青ナシに分類されますが、果面に赤褐色のコルク層であるサビが多く発生するため、赤ナシに近い外観になります(図5)。果肉は白く、果肉のかたさは硬度4.4ポンドと「幸水」、「豊水」と同程度で「新高」より軟らかく、肉質は良好です。果汁の糖度は14.6%(Brix※3)と高く、後述の通りより甘味の強い糖を多く含むことから、「幸水」、「豊水」、「新高」などの主要品種と比べてより強い甘味を持っています。果汁のpHは4.7程度とやや低いため、品種樹勢短果枝の数えき花芽の数強やや弱~中甘 太新 高多多やや多~多多4/204/1510/29/1941.9 27.9 開花期(月/日)収穫期(月/日)収量(kg/樹)注)樹齢は2017年時に11年生「甘太」の樹体特性 (農研機構果樹茶業研究部門 2011-2017)表1品種果実重(g)果肉硬度(lbs.)果汁糖度(%)527680甘 太新 高4.46.3裂果の発生無多14.613.14.7 4.9 無無無~微無果汁pHみつ症の発生芯腐れの発生「甘太」の果実特性 (農研機構果樹茶業研究部門 2011-2017)表2「甘太」の果実図5「甘太」およびニホンナシ主要品種における果実の糖組成図6新高豊水幸水甘太0246810121416注)農研機構果樹茶業研究部門(茨城県つくば市)における2014~2017年の平均値。図中の%は、各品種における、各糖成分の全糖含量に占める割合(%)を示す糖含量 (g/100ml)スクロースフルクトースグルコースソルビトール35%46%3%16%40%28%9%23%31%34%11%24%42%27%9%22%しゅうれいちくすいニホンナシ新品種「甘太(かんた)」28NARO Technical Report /No.10/2021
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