■ 農研機構における 「クイーンニーナ」の育成過程 「クイーンニーナ」は「安芸津20号」に「安芸クイーン」を1992年に交雑して得られた後代から選抜された四倍体赤色品種です(図2)。翌年に交雑で得られた種子を播種し、1年間苗木まで養成した後、選抜ほ場に定植しました。1997年に初結実した際に、大粒で果皮色が赤色の個体であることから注目個体として調査を続けました。その後ジベレリン処理による種無し化栽培を行ったところ、著しく大粒となり食味も優れたので有望系統として選抜されました。2004年から「安芸津27号」として全国34都道府県の36公設試験場での系統適応性検定試験※1(以下、系適試験)に供試し、2009年に新品種候補として適当であるとの結論が得られたため、同年に品種登録出願し、2011年に品種登録(登録番号第20733号)されました。登録の際に品種名は「安芸クイーン」の子であり、「安芸津27号」の「27」をかわいらしい響きの女性名であるニーナに当てて「クイーンニーナ」と命名されました。■ 「クイーンニーナ」の基本特性 「クイーンニーナ」の系適試験実施場所での栽培試験の結果を表2に示します。系適試験の結果、樹勢(春に出た枝の伸びの強弱・太さ・長さの程度)は「巨峰」や「ピオーネ」とほぼ同等である(やや強い)と評価されました。発芽期は北海道と長野で5月上旬、九州南部では3月下旬、それ以外の地域では4月上旬~下旬でした。開花期は北海道と東北地方の一部で6月下旬、中国地方と四国および九州で5月中下旬、それ以外の場所では6月上中旬で、発芽期および開花期ともに全国平均では「巨峰」と比較して2日程度遅い結果になりました。満開~満開3日後および満開10~15日後の25ppmを基準としたジベレリン「クイーンニーナ」の系譜※各品種名の背景色は果皮色を表す図2クイーンニーナ安芸津20号安芸クイーン・大粒・硬めでやや噛み切り やすい肉質・良好なフォクシー香・着色しにくい・渋味生じやすい・大粒・巨峰とほぼ同じ肉質 (中程度の硬さ・中程度 の噛み切りやすさ)・良好なフォクシー香・高糖度で良食味紅瑞宝白峰巨峰巨峰系適試験における「クイーンニーナ」の品種特性(2006~2008年、全国平均値)表2品種樹勢発芽期開花期収穫期クイーンニーナ巨峰ピオーネやや強やや強やや強4月18日4月16日4月17日6月5日6月3日6月3日9月15日9月8日9月11日品種果粒の大きさ(g)糖度(%)酸度(g/100mL)果肉の硬さ果肉の噛み切りやすさクイーンニーナ巨峰ピオーネ14.711.312.6やや硬中中やや容易中中20.618.518.20.400.530.49数値右肩の異なるアルファベット間に最小有意差法による5%水準での有意差あり果肉の硬さは次の品種を基準として評価。硬:「マスカット・オブ・アレキサンドリア」・「シャインマスカット」、中:「巨峰」、軟:「ナイアガラ」果肉の噛み切りやすさは次の品種を基準として評価。容易:「マスカット・オブ・アレキサンドリア」・「シャインマスカット」、中:「巨峰」、困難:「デラウェア」abbacbabbacbabbacb31NARO Technical Report /No.10/2021
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