コシヒカリ環1号コシヒカリ■ おわりに1.00.80.60.40.20.0ほ場Dほ場Eほ場F湛水節水湛水節水湛水節水0.0(mg/kg)0.20.40.61.00.80.60.40.20.0ほ場Dほ場Eほ場F※2 トレードオフ 広義的な意味として何かを得るために、別の何かを失うことで、互いに相容れない関係にあることを指します。ここでは無機ヒ素を減らす栽培管理をするとカドミウムが上昇してしまう(逆も同様)ことを意味します。※3 転炉さい 鋼の製造過程で生じる副産物であり、鉄、アルカリ分、ケイ酸に富むため、鉄が不足した老朽化水田や酸性土壌の改良資材として使われます。転炉スラグとも呼ばれます。2)農林水産省(2020) 食品に含まれるヒ素の実態調査. https://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/kome/k_as/occurrence.html(参照 2021-11-4)3)中村乾ら(2018) 水田土壌中の溶存ヒ素およびカドミウム濃度低減のための気相率. 農研機構, 研究成果情報. https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/niaes/2018/niaes18_s02.html (参照 2021-11-4)4)加藤英孝ら(2018) 出穂期前後の間断灌漑3湛4落による溶存および玄米ヒ素・カドミウム濃度の同時抑制(2)間断灌漑期の溶存ヒ素・カドミウム濃度と気相率・Ehの関係. 日本土壌肥料学会講演要旨集, vol.64:2.5)牧野知之ら(2017) 鉄資材と湛水管理による水稲玄米中のヒ素とカドミウム濃度の同時低減技術. 農研機構, 研究成果情報. https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/niaes/2017/niaes17_s01.html (参照 2021-11-4)6)安部匡ら(2017) カドミウム極低吸収品種「コシヒカリ環1号」の育成. 育種学研究, vol.19(3), 109-115.7)石川覚ら(2016) 「コシヒカリ環1号」を用いたヒ素とカドミウムの同時低減技術の開発. 農研機構, 研究成果情報. https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/niaes/2016/niaes16_s01.html (参照 2021-11-4)8)農研機構 農業環境研究部門(2021) コメのヒ素低減のための栽培管理技術導入マニュアル 〜コメの収量・品質への影響を抑えつつ、ヒ素を低減するために〜(第2版). https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/pamphlet/tech-pamph/130313.html (参照 2021-11-4)湛水節水湛水節水湛水節水0.0(mg/kg)0.20.40.6玄米カドミウム濃度コシヒカリとコシヒカリ環1号の玄米中無機ヒ素・カドミウム濃度の比較水管理は出穂期前後各3週間の湛水管理および灌漑水を制限した落水管理(節水管理)とした。図中の赤点線は、玄米無機ヒ素濃度またはカドミウム濃度の国際基準値を示す。玄米無機ヒ素濃度玄米カドミウム濃度用語解説̶※1 食品の国際基準値 コーデックス委員会によって設定された食品の安全に関する国際的な基準値になります。無機ヒ素は玄米で0.35 mg/kg、精米で0.2 mg/kg、カドミウムは玄米・精米で0.4 mg/kgが上限値であり、現在のところカドミウムのみ、国際基準値に準拠した国内基準値が食品衛生法の中で定められています。参考文献̶1)農林水産省(2018) 我が国における農産物中のカドミウム濃度の実態. https://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/kome/k_cd/jitai_sesyu/01_inv.html (参照 2021-11-4)玄米無機ヒ素濃度図6NARO Technical Report /No.11/202213(農業環境研究部門 化学物質リスク研究領域無機化学物質グループ)特集 防ぐⅡ ■後地域の特性に合わせたカドミウム低吸収性品種を選択することが可能になります。なお、「コシヒカリ環1号」をベースに育成した品種は、OsNramp5というカドミウムと植物にとって必須なマンガンの輸送に関わるタンパク質の機能を欠失しているため、通常品種に比べマンガン吸収量が低下します。特に節水管理は、土壌中の溶存マンガン濃度の低下により、カドミウム低吸収性品種のマンガン不足を助長させることで、生育低下を引き起こす恐れがあるため、生育に影響を及ぼさない程度の節水条件を予め把握しておくことが、本技術のポイントになります。 今回紹介した水管理、資材、品種による無機ヒ素・カドミウム低減技術のどれを選択するか、もしくはどのように組み合わせるかは、コメのカドミウム濃度への影響を踏まえて検討する必要があります。落水処理によるコメ中カドミウム濃度上昇の懸念がない場合は、中干しを確実に実施したうえで、出穂期前後に4日間の落水処理を複数回行う水管理が有効です。一方、落水処理によるコメ中のカドミウムの濃度上昇が無視できない場合は、カドミウム低吸収性品種を、出穂期前後に4日間の落水処理を複数回行う水管理で栽培することで、コメの無機ヒ素、カドミウム濃度を低濃度に抑制することができます。地域に適したカドミウム低吸収性品種がない場合は、含鉄資材を施用し、湛水管理で栽培する対策を選択できます。本技術に関する詳細は農研機構発行の「コメのヒ素低減のための栽培管理技術導入マニュアル〜コメの収量・品質への影響を抑えつつ、ヒ素を低減するために〜(第2版)」8)をご覧ください。
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