イムノクロマトキットの開発 従来の抗血清を用いた実験室内での抗原検出診断法(間接ELISA)では、口蹄疫ウイルス7血清型それぞれに対して検出を試みる必要がありましたが、本法では7血清型の共通抗原部位を認識するモノクローナル抗体を用いるため、これら7血清型すべてを一度に検出可能です。また、既存の海外市販の口蹄疫イムノクロマトキットでは、■ 口蹄疫ウイルス抗原検出銀増幅金コロイド(0.05μm)銀粒子(10μm)ウイルス検出の高感度化の原理唾液混入による検査への影響反応が阻害され検査は不成立唾液が混入しても検出可能図2図3唾液混入検体NARO Technical Report /No.11/2022唾液混入検体口蹄疫ウイルス抗口蹄疫ウイルスモノクローナル抗体金コロイド標識抗口蹄疫ウイルスモノクローナル抗体コントロールラインテストライン23直径が200倍へ開発したキットム)、日本ハム株式会社(以下日本ハム)の三者により実施され、農研機構が口蹄疫ウイルスと特異的に反応する抗体の作出、抗体の提供およびキットの実証試験を、富士フイルムが高感度化技術(図2)およびデバイスの提供を、日本ハムがキットの作製および製品化をそれぞれ担当しました。牛の口腔周辺の水疱病変を検体として用いた場合に唾液の混入によって反応阻害が起こりますが、本キットでは検体調整液を改良することで、検体への唾液混入による反応阻害を取り除くことに成功しました(図3)4)。次に、口蹄疫の発生が続くモンゴル国において口蹄疫罹患動物の病変部の上皮乳剤を用いた実証試験を行いました(図4)。その結果、口蹄疫の遺伝子診断法陽性の検体に対して、85.4%の高い一致率を示しました(表1)。本キットは動物用体外診断用医薬品として製造販売承認され(図5、図6)、現在利用可能な防疫資材の一つとして防疫指針1)の中に採録されました。今後、口蹄疫の国内防疫に有効活用され、被害の低減および食肉の安定供給への寄与が期待されます。 一方、口蹄疫が常在する東南アジア諸国などでは、診断施設や診断機器の維持や保守が困難で診断施設内海外市販品
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