農研機構技報No.12
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蒸機碾茶機碾茶 技術報告書の出版まで 日本は、ISO TC34/SC8国際会議の開催を誘致し、2015年に静岡市で第25回会議が開催されました。この静岡会議で、世界的に需要が増加しつつある抹茶の定義についての国際標準化の必要性を日本から提案しました。その結果、ISO TC34/SC8委員会の決議事項として、角川研究領域長のリーダーシップの下、抹茶の国際標準化の検討が進められることになりました。 一方、日本国内でも抹茶の定義についての議論が進められていました。国内では、公益社団法人日本茶業中央会が緑茶の表示基準1)という基準を定めていますが、その中に記載される抹茶とその原料となる碾茶の定義について検討が行われました。その結果、抹茶については「碾茶(覆下栽培した茶葉を碾茶炉などで揉まずに乾燥したもの)を茶臼などで微粉末状に製造したもの」(図4)と記載されることになり、この内容を含んだ記載内容をベースにして抹茶の定義を作成することとしました。2019年10月に中国杭州市で開催されたISO TC34/SC8国際会議でも改めて抹茶の定義について国際標準化を進めることを日■ 抹茶の国際標準化の開始から■ 抹茶の定義に関する技術報告書覆下栽培(遮光栽培)摘採碾茶荒茶加工碾茶仕上げ加工選別・整形・乾燥石臼■き蒸熱冷却・攪拌乾燥つる切り抹茶の製造工程図4NARO Technical Report /No.12/202212てんちゃ抹茶の国際標準化推進本から提案し、参加各国から同意が得られました。その後、抹茶の定義に関する技術報告書を作成する作業を正式に提案し、ISO TC34/SC8参加国の投票で承認が得られました。さらに、抹茶の国際標準化を作業するワーキンググループの設置提案も行い、2020年3月にWork-ing group 13 “Matcha tea”が設置され、角川研究領域長がコンビーナー(座長)に就任し、また筆者がコンビーナー補佐として作業が始動しました。 ちょうどその頃、新型コロナウイルスの感染が急速に世界中に広がっていき、国際標準化活動も様々な影響が出ました。ISOは対面での活動を停止し、オンラインの活動を推奨するようになったため、抹茶のワーキンググループの活動もウェブ会議やメールを通して行いました。そのような状況の中でなんとか議論を重ねた結果、2021年7月までに技術報告書原案がまとまりました。ISOの規格文書は、発行までに作業する委員会内で規格案として認めるか否かの投票が数回行われます。抹茶の技術報告書原案も、ISO TC34/SC8内で2度の投票にかけられました。まず、2021年7月から9月にかけて行われたCD(Com-mittee Draft)投票で無事に承認されましたが、投票時に受けた各国からのコメントや、さらにワーキンググループ内での議論で出た意見を元に技術報告書原案のブラッシュアップがなされました。続いて、2021年11月から2度目の投票となるDTR(Draft Technical Report)投票が開始されました。2022年1月に投票が終了し、最終的に技術報告書原案は承認されました。そして、ISO TR 21380「Matcha tea - Definition and characteristics -」として発行されることが決定しました。 発行された技術報告書には、抹茶の歴史から栽培法や製茶方法(図4)、品質評価や保管方法についての記述があります。 歴史については、粉末状の茶が12世紀に中国から日本に導入された後、日本でよしずやわらを用いた覆下栽培(遮光栽培)を行うようになり、新芽の緑色を濃くさせ、うま味を向上させることができるようになったこと、茶の湯の文化とともに技術が発達してきたことなどが記載されています。 栽培法と製茶技術については、原料としてチャの中国

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