農研機構技報No.12
16/40

I86420068410.950.90.85Dro1-NLにおける発現量共発現モジュール系統■ 遺伝子発現の多様性■ 根の生育とオーキシンの関係亜種相関係数根端における遺伝子発現パターンの品種間類似性(Kawakatsu et al., 20213)を改変)解析した全品種の遺伝子発現パターンを総当たりで比較し、類似性の指標である相関係数(最大1、最小-1)を示しています。赤いほど遺伝子発現パターンが似ていることを表しています。品種間の類似度でグループ化すると、亜種でグループ化されており、亜種内でよく似た遺伝子発現パターンを示しています(黒枠)。IR64とDro1-NILの根端における遺伝子発現パターンの比較(Kawakatsu et al., 20213)を改変)それぞれの点が遺伝子を示し、全体的な遺伝子発現パターンはIR64とDro1-NILで非常によく似ていました。しかしIR64とDro1-NILで発現量が2倍以上違う遺伝子(黒点)も存在し、特にIR64で強く発現している遺伝子は乾燥ストレスで発現が上昇することが知られている遺伝子でした(赤枠)。根の形質と遺伝子発現の相関関係(Kawakatsu et al., 20213)を改変)それぞれの形質と遺伝子発現量の相関関係を示しています。赤いほど正の相関(遺伝子発現量が高いほど形質値が大きい)、青いほど負の相関(遺伝子発現量が高いほど形質値が小さい)が強いことを示しています。遺伝子発現量と形質値の類似性で遺伝子をグループ化すると、8つの共発現モジュール(M1-M8)に分けられています。M1、M2、M3、M7は根の形質と負の相関(青)、M4、M5、M6、M8は根の形質と正の相関(赤)を示す傾向があります。右にそれぞれの遺伝子のオーキシンに対する反応性を示しており、根の形質と正の相関を示す共発現モジュールにはオーキシンによって誘導される遺伝子が多く含まれています。1210図4図5図6NARO Technical Report /No.12/2022混合品種アウス品種インディカ品種ジャポニカ品種16102IR64における発現量12オーキシン反応性イネの根が貧弱になる仕組み マイルドな干ばつストレス条件で栽培したイネの根の形質に関連する遺伝子を探索するために、次世代シークエンサー(超高速塩基配列解読装置)を利用して遺伝子発現の状態を網羅的に解析するRNA-seqによって、葉と根の先端部分(根端)における全遺伝子発現情報を取得しました。遺伝子の発現量はその遺伝子がどれくらい働いているかの指標になります。イネは約5万個の遺伝子を持っています。葉と根では1万5千〜1万8千個の遺伝子が発現しており、それらの発現パターンは亜種内で高い類似性を示しました(図4)3)。Dro1-NILは、浅根性のイネ品種IR64に深根化遺伝子Dro1が導入された深根性系統です。IR64とDro1-NILは遺伝的にほぼ同一ですが、深根性のDro1-NILは浅根性のIR64に比べて高い干ばつ耐性を持ちます。IR64とDro1-NILは非常に良く似た遺伝子発現パターンを示しますが、IR64では乾燥ストレスによって発現が誘導される遺伝子群の発現が上昇しており、畑ほ場での栽培が干ばつストレス条件であることを裏付けました(図5)3)。 根の形質と遺伝子発現量の相関を調べたところ、8つの共発現モジュール※3に分類され、根の生育と発現量が負の相関を示す遺伝子群と、正の相関を示す遺伝子群が存在しました(図6)3)。根の生育と発現量が負の相関を

元のページ  ../index.html#16

このブックを見る