農研機構技報No.12
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主要作物減肥基準00【短期】土壌くん蒸剤削減:既存技術の改良・展開土壌診断に基づく総合的病害虫管理技術農業資材審議会農薬分科会(第27回)資料では、農薬成分416種、リスク換算値総計23,330。クロルピクリン、D-D、ダゾメットのリスク換算値を日本植物防疫協会「農薬要覧2020(2019農薬年度)」などから調査し、残余を「その他」とした。クロルピクリンは有効成分含有量が異なる2剤(種類コード10471と10472)の合計値。25,000クロルピクリンくん蒸剤(28%)15,000粉粒剤(12%)ダゾメットD-D剤(11%)10,000その他(約4千剤)(49%)5,000成分10050【中長期】使用量全体の低減:革新的技術開発土壌センシング土壌メンテナンス・肥沃度・土壌病害※・微生物※※将来開発【短期】施肥適正化技術で施肥の無駄を抑制減肥エビデンスを取得し取りまとめて、施肥基準に反映【中長期】少量施肥品種の育成 【中長期】画期的に肥料効率の良いスーパー品種のゲノム編集育種AIを活用して野生種のデータから新しい農作物をデザイン。カンショなど土壌くん蒸剤使用が多い作目への横展開。レーザー照射で害虫防除有機質資材データベースを拡充。ドローンやAIなどによる簡便化診断技術を開発。関係県との連携。減肥指針(キャベツ・レタス等の窒素、水稲のカリは策定済み)の対象肥料成分や品目を拡大。天敵サポート資材次世代型バンカー資材→天敵管理の簡便化→多種害虫に対応各県と連携して、減肥指針を横展開。化学農薬使用量(リスク換算)50%低減加速化のための取組方向30%低減化学肥料使用量30%低減加速化のための取組方向現状2019年飲料用作物 3砂糖原料作物 4その他 4麦類 5飼料作物 7いも類 7野菜 30果実 9米 29目標2050年土壌くん蒸剤主要3種農薬使用量(リスク換算)カリ窒素(万t)計90万t2330計63万t372016現状総量285万t品目、構成比(%)2015年品目別の化学肥料の使用量(推計)化学肥料の使用量は継続的に減少してきたが、更なる低減に向け使用量の多い野菜・水稲を中心に低減対策が重要。図3図4362050目標AI解析内の微生物を完全制御し、GHG排出を大幅削減するインパクトの高い革新的な技術開発を進めることが考えられます。 化学農薬使用量50%削減(リスク換算)については、農薬成分416種のうち土壌くん蒸剤の主要3種だけでリスク換算値の過半を占めることが判明しており、目標達成の加速化に向けては、まずこれらの削減に向けた取組が重要です(図3)。このため、短期的には従来から開発を進めてきた土壌診断に基づく総合的病害虫管理技術を、これら土壌くん蒸剤の使用が多い作目に横展開を進めることと、ドローンなどを活用して診断を簡易化する技術の開発も併せて行い、使用量が多い県と連携した開発・実証を進めることが重要と考えます。さらに、中長期的には先進的な土壌センシング・メンテナンスなど革新的な技術開発を進めることが考えられます。 化学肥料使用量30%低減の目標達成を加速化するには、短期的には、野菜・水稲など使用量の多い品目に対して、地域・品目に合った配合の有機質肥料を提示し、その利用を促進することや、各県と連携して有機質肥料や土壌蓄積養分の活用による減肥対象を拡大し、施肥基準に反映させる取組が重要です(図4)。長期的には、塩害、干ばつに強く、低施肥でも栽培できる品種の育成を進め、画期的に肥料効率の良い品種を創出することが考えられます。 有機農業の取組面積拡大(25%)を加速化するため、農研機構ではNAROプロジェクトを立案しました。作物の作付面積は有機以外も含め水稲が最も多いですが、有機農業の面積推移をみますと、水稲作が伸び悩む一方で、野菜、茶は増加している現状があります(図5)。このため、まずは水稲作を中心に慣行栽培よりも多くの利益が確保できる経営モデルを検討し、栽培面積の拡大にボトルネックとなっている、NARO Technical Report /No.12/2022KPI:化学農薬使用量(リスク換算)50%低減KPI:化学肥料使用量2050年までに30%低減リン酸豆類 3KPI達成加速化に向けた取組方向KPI達成加速化に向けた取組方向

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