農研機構技報No.12
7/40

図2基腐病診断のためのサンプリング位置(左:茎、右:塊根)赤丸はサンプリング位置の例図3DNA抽出キット、リアルタイムPCRの機器と試薬 左(DNA抽出キット):DNeasy Plant Mini Kit(Qiagen社) 中(リアルタイムPCR機器):QuantStudio 5(Thermo Fisher Scientific社) 右(リアルタイムPCR試薬):TB Green Premix Ex Taq Ⅱ(TaKaRa Bio社) NARO Technical Report /No.12/20227まさいてきた菌の形態の顕微鏡観察に基づく診断を行う必要があり、2週間以上の時間を要していました。基腐病菌の遺伝子診断法として、海外において、コンベンショナル(従来の)PCR※3法による方法が報告されていましたが、国内既発生のサツマイモ乾腐病の病原菌(学名:Diaporthe batatas)をサツマイモ基腐病菌と誤診してしまう可能性があることが明らかとなっていました。そこで、宮崎、鹿児島、沖縄の各県で2018年に分離された基腐病菌と乾腐病菌の分離株およびNCBI(National Center for Biotech-nology Information、国立バイオテクノロジー情報センター、米国)データベースに登録されている両菌のrRNA遺伝子のITS1領域およびITS2領域※4の塩基配列情報を比較し、基腐病菌を特異的に検出できるPCRプライマーを設計しました。このPCRプライマーを用いて、PCRの条件設定を行い、基腐病菌を高感度に診断できる手法を確立しました3)。本方法では、最短で1日で診断が可能です。リアルタイムPCRによる診断の工程としては、■病斑組織からのサンプリングおよび前処理、■核酸抽出、■リアルタイムPCRの3段階の作業手順があります。■ 病斑組織からのサンプリングおよび前処理 発病部位は株の基部、塊根であるため、土や汚れが付着していることが多く、水道水で洗い落としておくことが重要です。発病している組織は、茎の場合は病斑部を含む5〜10mmを、塊根の場合、病斑部を含む塊根表面7mm角四方をメスやカッターで切り出します(図2)。切り出した組織はすり鉢やビーズ式細胞破砕装置などを用いて磨砕します。■ 核酸抽出 磨砕したかんしょ組織から全DNAを抽出します。可能であれば市販のDNA抽出キットを使用すると、効率よくかつ短時間で作業が行えます。筆者らはDNeasy Plant Mini Kit(Qiagen社)を使用しています(図3)。■ リアルタイムPCR 抽出したDNAを鋳型として、リアルタイムPCRを行いま

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る