農研機構技報No.13
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■ 「さくひめ」の栽培上の留意点注)農研機構(■城県つくば市)における2012〜2015年の平均値加温した「さくひめ」と「日川白鳳」のポット植え樹左:「さくひめ」、右:「日川白鳳」。2016年12月26日加温開始、2017年1月18日撮影。低温要求量が満たされていない「日川白鳳」はこの後も開花しません。低温要求時間(時間)5551,1731,1761,208「さくひめ」および主要品種の低温要求時間品種さくひめ日川白鳳あかつき川中島白桃「さくひめ」の果実(成熟しても地色に緑色が残る傾向がある)表2図2図3NARO Technical Report /No.13/202216ばんそう がい安定して開花・結実するモモ「さくひめ」です。収穫盛期は6月26日で、「日川白鳳」より5日早いです。開花盛期から収穫盛期までの果実の生育期間は「日川白鳳」より4日長い91日です。果実重は253g程度で、「日川白鳳」と同程度です。早生品種としては大きく、樹齢が進むと300g程度になります。収穫時の果皮の地色はやや緑色が残ります。果皮の着色はやや多いです(図2)。果肉は白色です。果汁の糖度は12%程度で「日川白鳳」と同程度です。果汁のpHは4.62程度で酸味は少なく、食味良好です。 全国のモモ栽培地域で栽培が可能です。しかし、開花期が一般的なモモ品種よりも早いため、晩霜害※6のリスクが高まる可能性があります。メリットとしては、低温要求量が従来の主要品種よりも少ないことから、今後冬季の気温が上昇しても安定した生産が期待できることおよび、早生品種の中で最も栽培されている「日川白鳳」と同等以上の品質の果実がより早く収穫できることから、「日川白鳳」の栽培割合の高い西南暖地での普及が期待されます。また施設栽培においては、従来の主要品種よりも早く加温を開始することが可能となるため(図3)、適切な栽培体系の開発によって現在よりも早い時期に出荷できる可能性があります。 果皮の荒れや裂果が年により認められることから、防止するためには果実に袋を掛けて栽培することが望ましいです。

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