9月8月7月6月5月4月3月2月1月 夏どり作型における問題点 根深ネギの栽培は、作型にもよりますが、播種から収穫までに約8カ月と非常に長い期間を要します。夏どり作型では、11〜2月に播種し、7〜9月に収穫します。この作型では、収穫時期である初夏から秋にかけてネギの生育停滞や品質の低下が起こり、生産量が減少します(図1)。■ ネギの端境期である■ はじめに東京中央卸売市場における令和3年のネギ月別入荷実績(東京中央卸売市場の令和3年ねぎ入荷実績をもとに作成)(トン)6000500040003000200010000図1NARO Technical Report /No.13/202210月11月12月18よう しょうは ざかいよう しんばんちゅうせいちゅうだいFUJITO Satoshi ネギは中央アジアが起源とされるネギ属植物で、主に東アジアや東南アジアで食されています。日本におけるネギ栽培の歴史は古く、奈良時代に書かれた日本書紀にもネギに関する記述があります。また、現在では野菜類の中で第3位の生産額を誇る、日本の食卓に欠かせない野菜品目の一つとなっています(生産農業所得統計、農林水産省 2019年)。一般に、ネギは可食部が緑色の葉身部分である“葉ネギ”と、白色の葉■部分である“根深ネギ”に大別され、それぞれ主に西日本、東日本で栽培されてきた歴史がありますが、栽培地域の多様化や輸送技術の発達によって、“葉ネギ”、“根深ネギ”ともに全国各地で食べられるようになりました。一方で、“九条ネギ”や“深谷ネギ”といった地域特有のネギ栽培に見られるように、地域在来品種をブランド化したものや、特産品として利用されるものもあります。 日本におけるネギの旬は秋〜冬ですが、様々な栽培時期に適した品種の育成や栽培技術の発展によりネギの周年栽培が可能になり、一年を通して販売されるようになりました。しかし、夏季は高温による生育停滞や品質低下が著しく生産量の減少に直結するため端境期※1となり、特に周年的に定量出荷が求められる加工・業務用ネギの生産において問題となっています。そこで、農研機構野菜花き研究部門では、ネギの夏季における生産量減少問題を解決するため、高温期でも品質や収量の低下が少ない、冬まき夏どり作型(以下「夏どり作型」)に適した根深ネギ品種「夏もえか」を育成しました。これは夏季の高温により、ネギアザミウマやネギハモグリバエを代表とするネギの病害虫発生頻度が増加することによって収穫物の品質が低下することや、抽苔※2の発生(図2)によって商品とならないネギが増加することなどが原因です。ネギの生育停滞や病害虫による被害、抽苔の発生を避けるため、夏どり作型においては葉■の生育が早い品種や、晩抽性の品種を選ぶことで対応しています。しかし、温暖化に伴う平均気温の上昇によって高温である期間が拡大し、さらなる病害虫の多発や抽苔の増加が懸念されています。特集 品種開発Ⅳ ■高温期に安定生産が可能な根深ネギ「夏もえか」藤戸 聡史
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