農研機構技報No.13
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■ おわりに系統適応性検定における富山県の結果 (参考)検定場所試験年度富山県農総技セ園研2018年度1月2月露地「夏もえか」の夏どり作型(参考)(mm)レビュー, vol.48, 2-3.2)農畜産機構(2019) ベジ探2019年版野菜統計要覧Ⅲ-8. 野菜の加工・業務用需要の動向. 農畜産業振興機構.                  https://vegetan.alic.go.jp/annual-report/y2019.html3)野菜流通カット協議会(2018) 『加工・業務用野菜の生産・流通の手引き』〜主要品目の事例集〜.4)山田朋宏(2021) 7〜9月の高温期に安定生産可能な根深ネギ品種「夏もえか」. 農研機構 研究成果情報(予定).調製収量注2)(kg/10a)抽苔株率(%)4,8783,9834,3458月9月10月(%)播種定植収穫品種草丈(cm)夏もえか75.0夏扇3号70.5夏扇4号81.23月4月葉■中央部径葉■長(cm)16.629.215.326.516.7注1)2018/1/26播種、4/23定植、8/23収穫 注2)調製収量:草丈60cmに葉身を切除した後の調製物の10a当たりの収量30.75月6月7月用語解説̶※1 端境期 農作物の収穫が少なく、市場に出回らない時期。※2 抽苔 花茎が伸びること。ネギにおいてはネギ坊主ができること。※3 ぼけ 葉■部が緑みを帯びること。※4 歩留まり 農作物の可食部の割合。参考文献̶1)小林茂典(2012) 野菜の用途別需要の動向と対応課題. 農林水産政策研究所分げつ株率0.00.00.01.20.00.011月12月表3図6NARO Technical Report /No.13/202221(野菜花き研究部門 野菜花き品種育成研究領域 露地野菜花き育種グループ)特集 品種開発Ⅳ ■め収穫が遅れると葉身や襟部が裂けることがあることや、冬季においても生育は旺盛なので播種期が早いと抽苔率が高くなることがあるので注意が必要です。 また、育成系統評価試験の参考試験地として富山県農林水産総合技術センター園芸研究所で「夏もえか」の系統適応性検定試験を行ったところ、2018年の夏には、高温と無降雨の異常気象により収穫物の襟首の裂けが多発し、「夏扇3号」では25.9%、「夏扇4号」では16.5%が出荷規格外となりましたが、「夏もえか」では5.0%にとどまり、異常気象時においても安定した品質で高い収量性(調製収量)を示すことが確認されました(表3)。 これらの結果から、「夏もえか」は夏どり作型(図6)に適しており、ネギの端境期である夏季においても安定して高い品質の収穫物を生産することが可能だと判断されたため、2020年に品種登録出願を行いました(登録番号第34728号)。系統適応性検定試験は5カ所(秋田県、新潟県、神奈川県、富山県、三重県)で行いましたが、これから他の都道府県でも栽培試験を行い、普及活動を進めていきます。 「夏もえか」はネギの端境期である夏季においても安定して高い収量を示すことから、家計消費用の夏どりネギへの利用はもちろんのこと、周年的に安定した収量が求められる加工・業務用への利用が期待できます。しかし、温暖化の影響により予測される高温期のさらなる拡大から、病害虫の発生頻度や異常気象の増加が考えられます。これらに備えるため、今後は「夏もえか」の普及を推進するとともに、高温でもより収量性の高い品種や高温期に多発する病害虫の抵抗性品種の開発に取り組んでいきます。

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