農研機構技法No.14
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■ おわりに用語解説̶※1 ppm(パーツ・パー・ミリオン) 液体の微量な濃度を示す単位。※2 mmol/L(ミリモル毎リットル) 濃度の単位。参考文献̶1)農林水産省ホームページ 「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されています.https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/ich2)河合崇行ら(2008) リックカウンターを用いた塩味増強効果の測定. 日本味と匂学会誌, vol.15(3), 489-492.3)河合崇行(2011) 動物行動学に基づいた美味しさの評価およびリック計測器の開発. 食糧, vol.49, 1-20.4)特許第6519847号(2019) 塩味増強剤.河合崇行ら.5)河合崇行ら(2015) 塩味増強効果のある食品素材の探索. 農研機構 研究成果情報.                            https://www.naro.go.jp/project/results/laboratory/nfri/2015/nfri15_s18.html6)河合崇行・日下部裕子(2015) 甘味・塩味における呈味増強香気の学習効果の検証. 日本味と匂学会誌, vol.22(3), 321-324. 7)河合崇行ら(2017) 塩味を想起する香りとその記憶. 農研機構 研究成果情報.https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/nfri/2017/nfri17_s05.html8)堀内真美ら(2021) 3Dフードプリンターによる介護食の造形および造形物評価. 日本食品工学会誌, vol.22(1), A12-A16.NARO Technical Report /No.14/202317特集 食品を科学する ■(食品研究部門 食品健康機能研究領域ヘルスケア食グループ)は、子どもの頃の食経験によって、バニラ香やオレンジ香でも塩味増強効果を示すか否かを調べる実験を行いました6)7)。ヒトに対して長い期間をかけて食経験をコントロールすることは不可能です。マウスを使って試験を行いました。その結果、6週齢の仔マウス時期に3週間オレンジ香付き食塩水を経験したマウスは、10週齢以降の大人になっても、香なし食塩水よりもオレンジ香付き食塩水に強い塩味を感じていることが明らかになりました(図4左)。同様に、仔マウスの時期にバニラ香付き食塩水を経験したマウスは、大人になっても、香なし食塩水よりもバニラ香付き食塩水に強い塩味を感じていることが明らかになりました(図4右)。我々には一見マッチングしていないように感じられる味と匂いの関係であっても、子どもの頃の経験により連合学習する可能性を示していると考えられます。減塩市場が拡大し、子どもの頃からしょっぱい食品を食べない世代が大人になったときには、塩味増強効果を持つ香りは無くなっているかも知れません。 本稿では、塩味の増強錯覚を引き起こす食品成分とその効果の評価法について紹介してきました。現在市販されている減塩食品は、減塩によって失われたおいしさを複雑な味の組み合わせで補い、単体でもたくさん食べられるように設計された商品がほとんどです。減塩前のオリジナル食品と同じ味にはなっていません。単体でもたくさん食べられる味であることは、ご飯が進む味ではなくなってしまっていることを意味しています。ナトリウムが与えてくれる塩味は、唯一無二の味覚なのです。近年では、減塩素材を使わず塩だけで塩味増強させる技術が報告されています。舌に直接触れる部分の塩味を通常濃度より強くし、その他の部分を低くすることによって、全体の塩分量を減らす作戦です。中空状の塩で表面積を大きくしたり、粗■きの塩を混ぜたりして、短時間のみ強い塩味を感じさせる方法が有効であることが知られています。流行りの3Dプリンタ食を使った官能試験においても、層構造の両端にのみ強い塩味をつけた不均一モデル食品が均一塩味食品よりも有意に塩味を強く感じたことが報告されています8)。筆者らは、低塩で発酵させた漬け菜に塩分高めの乾燥ふりかけを載せることで50%減塩野沢菜漬けを試作しました。アンケートを用いて評価してもらったところ、約3分の2の人から「ご飯が進む味だ」との回答を得ることができました。塩分摂取量を減らしつつ、しっかりした塩味を残す技術開発は、日本人の主食がご飯である限り、まだまだ伸びていくものと考えられます。

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