■ 水中短波帯加圧加熱の特徴■ 水中短波帯加熱の特徴■ 高周波パルス加熱の特徴NARO Technical Report /No.14/20237を高電界パルス並みに高くすると、通電加熱の熱効果に加え、高電界が微生物の細胞膜を物理的に破壊する電気■孔の効果が生じるため、食品中の大腸菌をごく短時間で効率的に殺菌することが可能となりました。高電界の交流を利用した本殺菌技術を交流高電界殺菌技術と呼ぶことにしました1)。交流高電界は、加圧下で100℃以上に加熱することにより、高電界パルスでは困難であった耐熱性の細菌芽胞まで失活することがわかりました2)。その後、食品メーカーおよび装置メーカーとの共同研究により、装置のスケールアップ(図1)と数々の商品テストを経て2014年に食品メーカーから交流高電界殺菌によるレモン果汁製品が上市されました3)。交流高電界は、細菌芽胞の殺菌に必要な加熱時間を従来加熱に比べて1/10以下に短縮することが可能なため、果汁本来の色やフレッシュな香気成分を保持し、製品の品質を高めることに成功しました。また、交流高電界は、短時間の加熱処理でペクチンメチルエステラーゼやリポキシゲナーゼなど、農産物の変質に関わる酵素を効率的に失活させることがわかり、食品の保存中の酸化や風味の変質を抑制し、食材の高い品質を長期間保存することが可能になりました4)。現在、本技術は、果汁以外に一部の牛乳の殺菌にも利用されています。 2017年に病原性大腸菌O157を原因とするポテトサラダの食中毒が発生しました。キュウリなどの生野菜が含まれるポテトサラダは、パウチ包装後の長時間の加熱殺菌を行うことができませんでした。そこで、総菜、豆腐、果実加工品などのパウチ包装した食品を均一迅速に加熱するために水中短波帯加熱技術を開発しました。プラスチック包装されたポテトサラダを温水に沈め、外から27MHzの短波帯の交流を印加することで、パウチ内のポテトサラダを従来の1/10以下の時間で均一迅速に加熱殺菌し、生野菜の熱劣化を低減することが可能となりました5)。また本技術は、ビワ6)やモモ7)などの果実コンポートの高品質殺菌への応用が報告されています。 2011年に発生した東日本大震災への対応として、東北沿岸の水産加工業のJST復興支援プロジェクトに参画して、水産加工品を常温長期保存するために水中短波帯加圧加熱技術を開発しました。パウチ包装した水産物を加圧条件下で水中短波帯加熱することにより、レトルト加熱並みの殺菌で加熱時間を短縮し、高品質な加工食品を実現しました(図2)。サンマのレトルト並みの殺菌を行いながら、身肉を柔らかく、ドリップを低減、レトルト臭を低減、背骨を軟化、背骨に含まれるコラーゲンを低分子化することで高品質なファストフィッシュ加工品を製造することが可能となりました8)9)。また、本技術を用いることにより、保存料無添加でゲル強度を低下させないソーセージ(図3)10)や蒲鉾を常温で長期保存できることが報告されています。本研究は、現在共同研究で実用的な規模の装置開発による実用化を目指しているところです。 野菜のペーストや果実ピューレなど高粘度の液体食品は、生果と同様の繊維質などの機能性を保持しています。一方、破砕することで酸化や酵素反応が進み、変色、風味が劣化し、腐敗が進みやすくなることが問題です。生の
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