農研機構技報No.15
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■ 開発した遺伝子検査法の性能評価被検試料(血清、臓器乳剤)と抽出試薬を混和下記❶〜❸の試薬、試料を混合❶逆転写リアルタイムPCR用酵素および バッファー(ウラシル分解酵素添加)❷CSFV、ASFVおよび IC検出用プライマー・プローブセット❸簡易抽出済み核酸試料60分核酸の簡易抽出およびマルチプレックスリアルタイムPCR反応による遺伝子検査法図3CSFVICASFVICNARO Technical Report /No.15/202412豚熱とアフリカ豚熱の同時診断可能な遺伝子検査法核酸の簡易抽出5分逆転写リアルタイムPCR反応蛍光シグナルの増幅を検出時間を大幅に短縮できます。被検試料の必要量は2μLと少量なため採材の手間も大幅に軽減でき、大規模、多検体のサーベイランスなどにも適します。また、試料の前処理が簡便なため、検査の迅速化のみならず、交差汚染や検体の取り違えのリスクが低減されます。さらに、検査用試薬にはウラシル分解酵素が添加されており、陽性対照試料などの増幅されたPCR産物の混入による誤判定のリスクも抑えられます。使用するリアルタイムPCR用機器の特性の違いにより2種類の検査用試薬から適切なものが選択できます。製品番号や仕様の詳細についてはタカラバイオ株式会社のHPを参照してください12)。            開発した試薬群を用いた核酸の簡易抽出およびマルチプレックスリアルタイムPCR反応による遺伝子検出検査法(新規検査法)の検出感度および特異度※3をCSFおよびASF感染動物、または非感染動物の臨床サンプルを用いて従来法と比較することにより評価しました13)。日本のCSFV分離株(CSFV/JPN/1/2018株)を実験的に感染させた豚およびイノブタ各2頭から経日的に採取した血清を新規検査法および従来法である核酸抽出精製およびコンベンショナル逆転写PCR法(Vilcekら5))に供しました。従来法ではウイルス接種後4日目から接種豚の血清からウイルス遺伝子が検出されましたが、新規検査法ではウイルス接種後3または4日目から検出可能でした。また、実験的にCSFVを感染させた2頭のイノブタでは、従来法ではウイルス接種後5日目から血清中にウイルス遺伝子が検出されましたが、新規検査法では3または4日目から検出が可能でした。このことから、新鮮な血清を検体に用いた場合、新規検査法は従来法よりも早い段階でCSFVを検出できることが示されました。 次に、ASFVアルメニア分離株(Armenia/07)を実験的に感染させた5頭のイノシシ(2頭にウイルスを接種、未接種3頭と同居飼育)から経日的に採取した血清を新規検査法および従来法である精製核酸を用いたリアルタイムPCR法(Kingら11))に供しました。その結果、検査結果は両検査法で完全に一致し、ASFV接種イノシシではウイルス接種後2日目以降、またウイルス非接種の同居イノシシでは、同居開始後7日目以降の血清中にASFV遺伝子が検出されました。 これらの実験に加えて、実験感染個体および各都府県でCSFおよびASFの病性鑑定に供された計114頭の豚およびイノシシの血清および臓器乳剤(■桃、脾臓、腎臓、腸管膜リンパ)計200検体(血清:144、臓器乳剤:56)を用いて新規検査法の検出感度と特異度を評価しました(表1)。その結果、血清試料を用いた場合のASFVおよびCSFV検出感度は、それぞれ100%および98.6%、特異度はそれぞれ97.1%および91.9%でした。一方、臓器乳剤試料を用いた場合のASFVおよびCSFVの検出感度および特異度は、いずれも100%でした。以上のことから、本検査法はCSFVおよびASFVを高い精度で検出できることが明らかとなりました。 本検査を実施する上で留意すべき点として、特に死亡個体から採取された試料を用いる場合には、溶血により被検試料が強い色調を帯びたり、腐敗により濁度が高まることで、蛍光シグナルの検出に阻害が見られる可能性のあることが挙げられます。このような検体については、色味の影響が抑えられる程度まで検体を適度に希釈する

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