10作業能率■ 中山間地域の特徴とスマート農業■ ドローン防除中山間水田作におけるドローン防除と慣行防除作業との作業能率の比較の事例(集落営農法人連合体形成に向けた経営体質強化・次世代人材育成コンソーシアム 令和2年度成果報告書より)(人時/10a)1.50.5NARO Technical Report /No.16/202410粒剤(1kg剤)散布運転者補助者38%削減背負式(慣行)ドローン動力散布機動力噴霧機液剤散布74%削減セット(慣行)ドローンDAIKOKU Masamichi図1 中山間地域では、高齢化、担い手不足、耕作放棄地の増大が年々深刻化しており、農地を維持管理し持続的に生産していくために少数の担い手への集積が急速に進んでいます。しかし、中山間地域の農地は条件が厳しく担い手の経営規模拡大は容易ではありません。これらの構造的な問題を解決するために、スマート農業技術に対する期待は大きくなっています。特に、多様な環境下におけるドローン防除、リモコン式草刈機など栽培管理の省力化について、スマート農業実証プロジェクト(以下「プロジェクト」)の多くの課題で現地実証が進められました。そこで、この2つの技術に焦点を当て、2021年度までに終了した中山間地域でのプロジェクトの成果を基に、技術の内容、導入による効果、課題と展望などについて紹介します。 2020年度のドローンによる農薬などの散布面積は、推計約12万haで前年度の約2倍と急速に拡大していると推測されています。プロジェクトの中でも多くの課題で実証に供されてきました。 図1に、中山間地域の水田作でドローン防除を行い、背負式動力散布機、セット動力噴霧機と作業能率を比較した結果を示します。粒剤散布の場合、慣行の背負式動力散布機では、ほ場周囲を歩行しながら散布しますが、ドローン防除では監視付きの2人作業でも作業速度が速く、作業時間は約40%削減されました。また、液剤散布では、ホースの取り回しなどに人手がかかるセット動力噴霧機と比較して、70%以上の作業時間の削減になりました。これは1事例ですが、他のプロジェクト課題の結果もほぼ同様で、背負式動力散布機で30〜70%削減、セット動力噴霧機で70〜95%削減になっています。無人ヘリコプターと比較すると能率は劣りますが、中山間地域の中小区画ほ場では小回りのきくドローン防除が適しています。生産現場からは、特に肉体的な疲労が小さくなったこと、機動的に適期防除が行えたことにより病虫害被害を最小限に抑えられたことなどが高く評価されました。 ドローンは防除ばかりでなく肥料散布など他の作業にも利用されると機械の利用効率は向上しますが、タンク容量が小さく肥料の補充回数が増え、防除と比較すると能率は低下します。しかし、ドローン専用肥料が開発され、比較的タンク容量が大きい機種も販売されるようになり、肥料散布への活用も今後広がると思われます。また、必要な場所に必要な量の肥料を撒く可変施肥対応のドローンも市販され、減肥への効果も期待されます。さらに、水稲や緑肥作物などの播種にも利用が広がっています。 果樹作でもドローン防除の期待は大きくなっています。図2は、傾斜地果樹園でのドローンと、スピードスプレー特集 スマート農業の普及に向けて 〈個別のスマート農業技術の導入効果〉 ■中山間地域における管理作業の効率化を実現するスマート農機―ドローン、リモコン式草刈機―大黒 正道
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