農研機構技報No.16
35/52

■ 分析結果注:聞き取り調査結果に基づき作成。20ha(水田)水稲14ha、大豆6ha3,600万円630万円・収量計測コンバインに更新 (機械購入代金200万円増加)・可変施肥で水稲収量9%増加、肥料費が3%減少・経営面積は5haまでしか拡大できない (最大25ha)・非熟練の若い従業員を雇用 (賃金は年間350万円)・自動操舵システムを装備したトラクターを1台 追加購入(800万円/台)。トラクターは合計2台・田植機を直進アシスト機能付きに更新 (機械購入代金71万円増加)・非熟練者が作業を実施するが、自動操舵、直進 アシスト機種を活用することで、労働時間は経営 主と同じ時間数で作業可能・臨時雇用は5月のみ1人雇用・自動走行トラクターを1台追加購入 (1,000万円/台)。有人+無人トラクター2台で 協調作業を実施・自動運転田植機に更新 (機械購入代金150万円増加)・基地局を335万円で装備・協調作業により耕起作業30%、代かき作業26% 省力化・自動運転田植機により移植作業時間40%削減・秋作業については変更なし・これらについては、「臨時雇用なし」と、「臨時雇用 導入」の2つのケースについて計算対象事例(A経営)の経営概要労働力経営面積部門構成家族2人(うちオペレーター1人)、臨時雇用2人主な機械装備トラクター1台、田植機1台、コンバイン1台売上高所得試算の前提経営改善シナリオ1経営改善シナリオ2経営改善シナリオ3NARO Technical Report /No.16/202435表1表2収量計測コンバインを活用して水稲収量向上自動操舵システムや直進アシスト田植機を導入するとともに、非熟練の若い常時雇用を導入し規模拡大を図る雇用労働力の確保が難しいという状況を踏まえ、自動走行トラクター、自動運転田植機を導入して、労働者数は変えずに面積を拡大 なお、自動走行トラクターや自動運転田植機、運転支援機能付きのトラクター・田植機、収量計測コンバインの価格は、スマート農業実証プロジェクトで2019年度に導入された機械の価格や市場価格を参照して設定しています。また、これらの機械を導入することによる労働時間の削減率は、農林水産省・農研機構「スマート農業実証プロジェクトによる水田作の実証成果(中間報告)」に示された作業ごとの平均値を(ただし、自動運転田植機についてはあるコンソーシアムの実証データを使用)、また、可変施肥などによる増収効果については、農林水産省・農研機構「令和元年度スマート農業実証プロジェクトの成果について(水田作)」で示されているデータを用いました。 表2に試算の前提を、また、表3には各シミュレーションの結果を示しています。 まず、試算の前提として、現状においてもまだ規模拡大は可能なことから、経営面積の制約を置かないで試算を行いました。その結果、今の技術条件のもとで規模拡大を進めると、経営面積25.5ha、所得は890万円が期待できることがわかりました。そのため以降では、この「現状(規模拡大)」をベースとして、スマート農業による経営改善効果を評価することとします。 農業労働力の高齢化から農地流動化が進展しているとはいえ、地域によっては担い手も多く存在し、大幅な規模拡大が期待できない所もあります。そのような状況下における経営改善策としては、まずは、基幹作物である水稲の収量水準を向上させていくことが有効であり、その対策としては、収量計測コンバインを導入してほ場別収量データを収集し、それをもとに可変施肥を行うなどの対策(経営改善シナリオ1)が考えられます。

元のページ  ../index.html#35

このブックを見る