農研機構技報No.16
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採算性評価の必要性 スマート農業の推進においては、自動走行トラクターなどの自動化農機や、直進アシスト田植機、ドローン、収量計測コンバインなどスマート農機が導入される場合が多くあります。その際、それらの中には高額な機種もあることから、導入に当たっては十分な稼働面積を確保することが求められます。しかし、それが望ましいとしても、どの程度の面積が採算性を確保する上で必要なのかがわからないと農業者は投資に踏み切れません。 投資の経済性は、費用対効果により判断されます。その際、費用は一定の手順で算出できますが、効果はそれらの機械をどう活用するかで変わるため、トラクターなど様々な活用方法がある機械は各事例に即して検討する必要があります。一方、機械の用途や効果が明確であり、その導入コストが代替する手段の費用と比較できる場合には、経■ スマート農機導入に当たっての■ 農薬散布用ドローンの採算規模機体は200万円/機(中型)、120万円/機(小型)を設定中型はバッテリー4個、小型は2個購入を想定粒剤用と液剤用を装備5年に1回を想定毎年5年に1回を想定労賃は1,500円/時間で計算注:中型機は30kgタンク搭載、小型機は10kgタンク搭載を想定。ドローンの耐用年数は5年としています。これらの経費はスマート農業実証プロジェクトの事例を参照していますが、事例により違いがあることに加え、ドローンの価格も年次により変わるため、一つの例示と理解してください。(万円)ドローンの導入に要する費用例 機 種機体・バッテリー・充電器1組バッテリー等散布ユニット代理店手数料・オペレーター講習料点検・保険登録料合計(年間)防除労働費(円/10a)中型機平坦地40.011.010.08.017.00.0286.0300小型機中山間24.07.06.05.013.00.0255.0405備 考NARO Technical Report /No.16/202438UMEMOTO Masaki表1(耐用年数は5年で計算)済性を客観的に評価することも可能となります。本稿では、そのような事例として農薬散布用ドローン、直進アシスト田植機、収量計測コンバインを対象に経済的な採算規模を試算しましたので紹介します。 従来、ほ場での農薬散布は、動力散布機などが用いられてきました。しかし、人力による地上散布は労働負荷も大きいため、作業者を確保することも困難になってきています。そこで、ここでは、自らが人力では作業しないことを前提に、農薬散布用ドローンを購入して作業を行う場合と、防除作業を外部に委託する場合を比較することで、ドローン購入の採算規模を算出します。 防除を外部に委託する場合の作業料金は2,000円/ 10aとしました注1)。一方、ドローンを自ら所有する場合は、機体の購入費用に加え、付属品や手数料、保険料、登録特集 スマート農業の普及に向けて 〈スマート農業の導入シミュレーション〉 ■スマート農機の導入コストと採算規模―ドローン、直進アシスト田植機、収量計測コンバイン―梅本 雅

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