農研機構技報No.16
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航空防除作業委託料金ドローン利用に関わる経費■ 直進アシスト田植機の採算規模ドローン導入の採算規模注:ドローン導入にかかる経費は表1を参照。航空防除委託料金は全国農業会議所「農作業料金・農業労賃に関する調査結果」2021年の防除作業の全国平均を用いました。152025303540455055(ha)作付(防除)面積農研機構技報5号「ドローン」特集⑥ 九州沖縄農業研究センター 大段 秀記著から引用(円/10a)20,00018,00016,00014,00012,00010,0008,0006,0004,0002,00001005NARO Technical Report /No.16/2024委託料金中型機・2回防除小型機・2回防除小型機・1回防除中型機・1回防除39図1料などもかかります。これらを中型機(30kgタンク、平坦地の利用を想定)と小型機(10kgタンク、中山間での利用を想定)について試算すると表1の通りとなります。 ドローンによる農薬散布時間は、実証事業のデータで平均すると、平坦地の場合0.2時間/10a、中山間では0.27時間/10aでした注2)。賃金単価を1,500円とすると、散布労働費は平坦地で300円/10a、中山間で405円/10aとなります。この労働費以外の経費は固定費なので、散布面積が大きくなるほど10a当たりの金額は少なくなります。図1は、中型機(平坦地)と小型機(中山間)について、ドローンを購入した場合の費用曲線と作業委託料金を比較したものです。この費用曲線と委託料金が交差する所が散布用ドローンの経済的な分岐点となり、中型機では50.7ha以上が、小型機では34.6ha以上が採算規模になります。なお、これは作付(防除)面積なので、稲作で2回防除するとすれば、中型機の場合は、水稲作付面積ベースで25.3haと採算ラインが下がります。このように、稼働面積の拡大は採算性の確保に有効です。また、ドローンの利用を自経営で完結する必要はなく、シェアリングなどを通して共同利用することや、作業受託により面積を拡大するといった対応も求められます。 直進アシスト田植機により移植作業の省力化が期待できますが、慣行の田植機よりは割高であることから、費用対効果を得るためには稼働面積をより多く確保する必要があります。また、直進アシスト機能は熟練者の作業能率を大きく改善するものではありませんが、非熟練者の作業の効率化には有効です。そのため、ここでは、非熟練者がオペレーターを担当する際に、経験不足から移植作業に多くの時間がかかることを回避するとともに、収量確保のため適期内に作業を終えることをねらいとして直進アシスト田植機を導入するケースを想定します。 試算に当たっては市場評価が高い品種を中心に作付けすることとし、標準的な移植期間は3週間とします注3)。また、オペレーターが1人の場合には代かきも行わなければならないことから、その作業日を確保することを前提に、ここでは、適期内に移植作業が実施可能な日数は12日としました。 スマート農業実証プロジェクトの実績では、慣行機に対して直進アシスト田植機では18%少ない作業時間となっていますが、上記の作業をいずれも非熟練者が行っているとすると、見方を変えれば、慣行機を用いた場合には通常よりも18%作業時間が増加すると見ることもでき

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