販売増加額・追加減価償却費田植作業受託料金田植機償却費・労働費・燃油代■ 収量計測コンバインの採算規模慣行田植機と直進アシスト田植機の採算規模注:田植機の価格は慣行田植機350万円/台、直進アシスト田植機420万円/台。減価償却費に労働費と燃油代300円/10aを加算。修繕費は考慮していません。田植作業の作業料金は、全国農業会議所「農作業料金・農業労賃に関する調査結果」令和3年より7,900円/10a(苗代は含まない)としました。(円/10a)14,00013,00012,00011,00010,0009,0008,0007,0006,0005,0004,0005678910111213141516171819202122232425262728(ha)収量計測コンバイン導入の採算規模と増収率注:慣行コンバインを収量計測コンバインに更新することに伴う追加経費は210万円としました。耐用年数7年では年間30万円の経費増。修繕費の増加は考慮していません。ここでは、ほ場内ではなく、ほ場間での施肥量の調整を想定しているため、ほ場別収量等のデータ解析には特別なソフトを必要としないという仮定を置いています。増収効果を評価するための水稲収量は2022年度の全国平均単収536kg/10aを用い、販売単価は2021年米生産費調査から184円/kgとしました。(ha)(万円/10a)1401201008060402005791113151719212325272931水稲作付面積水稲作付面積図3NARO Technical Report /No.16/2024慣行田植機直進アシスト田植機慣行田植機での適期内作業限界規模田植作業受託料金慣行田植機の限界規模での費用水準収量計測コンバイン追加減価償却費増収率4%増収率2%増収率1%40図2スマート農機の導入コストと採算規模ます。そのため、ここでは、非熟練者が慣行機で作業する場合は1.34時間/10aかかるのに対して、直進アシスト田植機では熟練者と同様の作業時間(1.10時間/10a)で移植が行えると仮定します。これらは補助作業注4)も含んだ時間です。移植作業に充当できる時間数を6時間/日とすると、直進アシスト田植機を用いた場合は1日に2.2ha植え付けできますが、非熟練者が慣行機を用いる場合は1.8haの植え付けにとどまることになります注5)。このような前提のもとでは、慣行機では21.6ha(1.8ha×12日)が適期内に移植可能な面積の上限になりますが、直進アシスト田植機では26.4ha(2.2ha×12日)を適期内に作業できると試算されます。このように、直進アシスト田植機は、非熟練者がオペレーターを担当する場合でも、適期内により多く移植作業を実施できることがわかります。 田植機の稼働面積が大きくなるほど10a当たりの減価償却費が減少することを念頭に、それぞれの田植機の費用曲線と移植作業委託料金との関係を整理すると図2の通りとなります。機械の価格など前提条件は図の脚注に示しています。この図から、水稲作付面積が9ha以上であれば田植機を所有して自ら作業を行った方が作業を委託するよりも有利であり、また、23ha以上の作付面積を確保できれば、慣行田植機よりも直進アシスト田植機が経済的となることがわかります。近年は規模拡大が進む一方で、熟練した作業者の確保が困難になってきていますが、このような場合においては、直進アシスト田植機を導入する効果は大きいと言えます。 収量計測コンバインへの投資を評価する場合、コンバインとしての機能は慣行機と変わらないことから、その採算性の検討においては、機種の更新に伴う追加経費と、それによる経済効果の比較考慮が必要になります。なお、収量計測コンバインでは作業時間の削減効果も示されていますが、それが経営上どれだけの有効性を持つかは天候条件や乾燥調製施設の処理能力にも左右されます。また、収量計測コンバインを購入する以上は、それによって得られたデータを使い、可変施肥などに活用して収量向上に取り組まないと、導入する意義が生じません。そのため、ここでは、収量計測コンバインに更新することによる追加経費と、それに対応した稼働面積、およびデータ活用による増収効果を比較することで、その経済性を評価することとします。 試算に当たっての前提条件は図3の脚注に示していますが、販売単価を一定としているので、稼働(収穫)面積や収量に比例して収入額は増加します。このような条件のもとでの稼働面積、収量増加率に対応した採算ラインを見ると、増収率4%では8ha以上、増収率2%では15ha以上稼働できれば、慣行のコンバインから収量計測コンバインへの更新は経済的に有利と言えます(図3)。一方、増収率が1%の場合には30.5haを超える稼働面積が投資の採算性からは必要となります。コンバイン自体の経費を考慮すると、収穫作業面積は一定程度確保されることが
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